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再審 母親に無罪判決 地検は上訴権放棄へ

青木恵子さんの無罪判決を知らせる垂れ幕を掲げる弁護士=大阪市北区で2016年8月10日午前10時5分、小関勉撮影

大阪地裁 午後、元内縁の夫の再審判決も無罪

 大阪市東住吉区で1995年、小学6年の女児(当時11歳)が焼死した民家火災の再審で、大阪地裁は10日午前、殺人罪などで無期懲役が確定した母親の青木恵子さん(52)に無罪判決を言い渡した。西野吾一裁判長は「自然発火の可能性は合理的だ」と述べた。大阪府警の取り調べについて、「精神的な圧迫による取り調べが認められる」と指摘し、自白の証拠能力を否定した。

 午後には、内縁の夫だった朴龍晧(ぼく・たつひろ)さん(50)の再審判決もあり、同じく無罪が言い渡された。

 大阪地検は上訴権(控訴)の放棄を地裁に申し立てる方針で、同日にも2人の無罪が確定する。

 確定判決は青木さんらの無罪主張を退け、朴さんの「自白」を有罪認定の柱とした。内容は「青木さんと共謀し、車庫の軽ワゴン車から抜いた約7リットルのガソリンにライターで火を付けた」というものだった。

 判決はまず、出火原因を改めて検討した。弁護側が再審請求後に当時の現場を詳細に再現した燃焼実験の結果などを踏まえ、車の給油キャップが緩んでいた可能性が高いと指摘。「キャップから漏れたガソリンが気化して車庫の風呂釜の種火に引火し、自然発火したという可能性は合理的だ」と認定した。

 その上で、朴さんらの自白内容について「取調官の誘導で虚偽の自白を促された」と述べ、信用性を否定した。

 青木さんについては、大阪府警に逮捕された95年9月10日と、その4日後に、「娘に掛けた1500万円の生命保険金を得るため殺した」などと書かれた計9通の自供書や自白調書が作成された。確定審ではうち8通が証拠採用され、有罪認定の根拠となった。

 再審請求の過程で検察側は、府警の取り調べ日誌を新たに開示。日誌には、刑事が取調室で大声で詰問したり、青木さんがしゃがみ込んで吐き気をもよおす中で調べを続けたりする様子が書かれていた。朴さんについては、父親の手紙を見せて自白をうながしたとみられる記述もあった。

 西野裁判長は2人の自白の任意性も否定し、弁護側が求めていた自供書などの証拠排除を認めた。

 戦後に発生し、死刑か無期懲役が確定した後に再審が開かれたのは、2012年の東京電力・女性社員殺害事件以来で9件目。過去8件は全て無罪が確定している。【三上健太郎、向畑泰司】

大阪地裁判決の骨子

▽青木さんは無罪

▽出火原因は自然発火の可能性が合理的

▽過度な精神的圧迫を加える取り調べが認められ、青木さんと朴さんの自白の証拠能力はない

▽青木さんと朴さんの自供書などを証拠から排除する

大阪・東住吉の女児焼死火災

 1995年7月22日夕、大阪市東住吉区の民家の車庫から出火、入浴中だった小学6年の青木めぐみさんが焼死した。大阪府警は保険金目的の放火殺人事件として、母親の青木恵子さんと内縁の夫だった朴龍晧さんを逮捕。2人は公判で無実を訴えたが、捜査段階の一時的な「自白」が重視され、最高裁で無期懲役が確定した。弁護団は2009年に再審請求し、自然発火の可能性を裏付ける火災の再現実験が新証拠になった。大阪地裁と大阪高裁はともに裁判をやり直す再審の開始を認め、昨年10月、2人は20年ぶりに釈放された。

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