Ubuntu Weekly Recipe

第433回 Kindle UnlimitedをUbuntuで利用する

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先週,Amazonの月額制読み放題サービスであるKindle Unlimitedが日本でもスタートしました。そこで今回はUbuntu上でKindle書籍を読む方法を解説します。ついでにKindle用の書籍データを作成する方法も紹介しましょう。

Kindle on Ubuntu

KindleはAmazonが販売・提供している電子書籍端末であり,読書アプリであり,電子書籍ストアです。Kindleストアで購入した電子書籍は,Kindle端末やiOS/Android上のKindleアプリ,場合によってはWebブラウザーで閲覧できます。今回スタートしたKindle Unlimitedは,Kindleストア上の一部の書籍を月額で読み放題になるサービスです。つまりKindle書籍を読む環境があれば,定額でさまざまな本を読めるというわけです※1)。

※1
読者にとっては嬉しいサービスですが,本を作る側にとってはいろいろと悩ましいサービスのようです。定額サービスのメリットを活かしてたくさん読んだ上で,その中に気に入った本が見つかれば実際に購入するという流れになればいいですね。

Kindleは書籍のファイルフォーマットとしてMobipocket形式か,より新しいKF8形式KFX形式を採用しています。さらにDRMがかかっているものもあることから,Kindle書籍を読むためにはこれらに対応した専用のハードウェアもしくはソフトウェアが必要になります。単純に読書をするだけであれば専用端末を買ったほうが便利です。しかしながらそれでは本連載が成り立ちません。よってUbuntu上でもKindle Unlimitedを享受する手段を模索することにしましょう。

結論から先に言ってしまうと,Ubuntu上で利用できるリーダーの選択肢は以下の2つです。

Kindle Cloud Reader
Webブラウザー上で動作するKindleリーダーです。ただし日本語の小説(やおそらくリフロー型の和書全般)には対応していないようで,基本的に日本語の書籍で読めるのはマンガと雑誌だけです。また当然のことながらオフラインでは動きません。
Kindle for PC
PC用のKindleアプリです。書籍データをダウンロードして読むタイプなので,オフライン状態でも読書はできます。Windows版とMac版が存在します。

Kindle Cloud Readerの使い方は至極単純です。FirefoxやChromiumなどでサイトにアクセスし,Amazonのアカウントでログインするだけ。AmazonのKindleストアでKindle書籍を購入する際に送り先を「Kindle Cloud Reader」にしておけば,それだけでライブラリーに追加されます。

Kindle for PCに,Ubuntu版は存在しません。そこで出てくるのがWineです。WineはLinux上でWindowsのバイナリを動かすための「互換レイヤー」とも言えるソフトウェア群です。最近はやりのBash on Ubuntuを実現しているWindows Subsystem for Linux(WSL)「Windows上でLinuxのELFバイナリを動かすためのレイヤー」なので,それを逆にしたものだと考えればいいでしょう。といってもWSLと比較してWineの方は20年以上前から存在する,歴史あるプロジェクトです。

さてWineを使うと,けっこうな数のWindowsソフトウェアがLinux上でも動きます。Kindle for PCも例外ではありません。

Kindle on Ubuntu with Wine

Kindle for PCを起動する前に,まずはWineをインストールします。Wineの最新安定版は1.8です。しかしながらUbuntu 16.04 LTSの公式リポジトリからインストールできるWineは一つ前の安定版である1.6となります。また,Ubuntu Wine TeamのPPAには1.8が存在しますが,1.8.0のみで1.8.1や1.8.2,1.8.3には追随していません。さらにWine本家のPPAには,開発版である1.9のパッケージ(winehq-devel)と,よりカッティングエッジな機能を追加したパッケージ(winehq-staging)が存在します。

いずれのバージョンのパッケージでもKindleを動かすことはできます。今回は将来的により多くのWindowsソフトウェアを動かすことを考えて,Wineの公式ドキュメントに従ってwinehq-develパッケージをインストールしましょう。

Wineのインストール

Windowsソフトウェアには32bitバイナリもまだ多いことから,Wineそのものも32bit版が必要になります。そこで,パッケージングシステムに32bitアーキテクチャの対応を追加しましょう。とはいえ,デスクトップ版なら最初から追加されていることでしょう。

$ sudo dpkg --add-architecture i386

あとはPPAを追加してwineをインストールするだけです。

$ sudo add-apt-repository -y ppa:wine/wine-builds
$ sudo apt update
$ sudo apt install winehq-devel

Wineをインストールしたら一度,winebotコマンドでいくつかのDLLなどを~/.wine/に展開しておきます。

$ wineboot
(そこそこ時間がかかります)

wineboot実行時に問われるMonoやGeckoは必要に応じてインストールしてください。今回は不要なので,インストールしていません。

新しいWineはUbuntuシステムのフォント情報を取得し,自動的にWine用のレジストリに展開してくれます。しかしながら「MS Gothic」などのエイリアスは作成してくれませんので,手動でレジストリに追加しておきましょう。以下の内容を~/.wine/user.regの末尾に追加してください。wine regeditで編集してもかまいません。

[Software\\Wine\\Fonts\\Replacements]
"MS Gothic"="TakaoEx\x30b4\x30b7\x30c3\x30af"
"MS PGothic"="TakaoEx\x30b4\x30b7\x30c3\x30af"
"MS Sans Serif"="TakaoEx\x30b4\x30b7\x30c3\x30af"
"MS Shell Dlg"="TakaoEx\x30b4\x30b7\x30c3\x30af"
"MS UI Gothic"="TakaoEx\x30b4\x30b7\x30c3\x30af"

あとは「wine iexplore」コマンドなどで,インターネットに接続できることも確認しておきましょう。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。

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