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「シン・ゴジラ」石原さとみを余計なお世話だが全力で擁護する

2016年8月10日 10時00分

ライター情報:木俣冬

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7月29(金)に公開されてから2週連続で全国映画動員ランキング1位となった「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督、樋口真嗣監督/東宝)がすこぶる評判がいい。とにかく面白い! 凄い! と口こみの勢い激しく、リピーターも後を絶たない(私も2回観た)。15日には新宿バルト9で「発声可能上映」(声出し、コスプレ、サイリウムの持ち込み可能)という前代未聞のお祭り的上映も行われるほどの盛り上がりを見せている。

映画の熱と腕力の強さに巻き込まれた観客の熱狂的な賞賛だらけの中で、なぜか一点だけ評価が低いのが石原さとみ演じるカヨコ・アン・パターソンという日系3世の米国大統領特使だ。
イラスト/小西りえこ

ゴジラ出現に当たりアメリカから日本にやって来たカヨコは、大統領の座を狙っている才媛で、そんな彼女の評価は、英語の発音がルー大柴みたい、動作が漫画っぽい、うざい、など散散。
そのうえ最近、もうひとりの女性キャラ環境省自然環境局野生生物課課長補佐の尾頭ヒロミ(市川実日子)の人気が急上昇。石原さとみに関して、英語の発音に関する擁護記事や、カラダにフィットした衣裳のためにケータリングを食べないストイックさなどを明かした記事なども出ているが、尾頭の身だしなみにこだわらない早口の勉強家という萌え要素には叶わない。演じている市川実日子は、庵野監督の「キューティーハニー」(04年)にも重要な役で出演していて庵野の信頼も厚いだろうと思われるだけに、石原さとみは分が悪い。

だが、みんな、昨年(15年)「進撃の巨人」公開時、樋口監督発言が炎上騒ぎになったとき、石原さとみが大人の対応コメントをLINEで発して喝采したことを忘れてしまったのか。
その時のコメントはコレ。

「映画というものはその人の育った環境や情報、知識、体調や心のバランスなどで感想が変わってくる。だから、どんな意見や感想も間違いじゃないし正しいと思います。そして、監督やキャストをはじめとする制作チームは、面白い作品を作ろう、観てくれる人に楽しんでもらおうと頑張ってきた。映画のレビューを書いてもらうのはもちろん嬉しいけれども、まずは自分の目で身体で心で体感しに行ってもらえたらと思います!」

今、読んでもいいことおっしゃっています。
もちろん、人間性と演技は別という考え方もあるとはいえ、石原さとみは「シン・ゴジラ」で俳優としてちゃんと仕事をしている。さながら内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)や内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹(竹野内豊)や対策本部の人々、お茶を入れてくれるおばちゃん(片桐はいり)の出番の前にさりげなく映っているゴミ回収している人(こういう人をちゃんと描いているところが好き)や逃げ惑うエキストラの人たちなどなど、ものすごくたくさんの登場人物たちと同様、自分のやるべき仕事を全うしているのだ。

ライター情報

木俣冬

著書『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、『ケイゾク、SPEC、カイドク』、ノベライズ『リッチマン、プアウーマン』『デート~恋とはどんなものかしら~』

URL:Twitter:@kamitonami

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