露、国主導ドーピング…リオ不参加を勧告
【サレー(カナダ)田中義郎】2014年ソチ冬季五輪におけるロシアのドーピング検査の不正を調べていた世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームは18日、ロシアが国主導で自国選手のドーピング違反が発覚しないように検体をすり替えるなどの隠蔽(いんぺい)行為をしていたとする報告書を公表した。これを受け、WADAは国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)に、開幕間近のリオデジャネイロ五輪・パラリンピックへの「ロシア選手団の参加を全面的に拒否することを検討すべきだ」と勧告した。
パラでも不正
IOCのバッハ会長は「スポーツや五輪の高潔性に対する衝撃的で前代未聞の攻撃だ。問題に関与した個人や団体に最も厳しい処分を科すことをためらわない」と声明を発表した。IOCは19日、緊急に電話で理事会を開き、厳罰を含めた対応を検討する。
IPCのクレーブン会長も「ショックを受けており、非常に悲しい」との声明を発表。近く対応を協議する。
報告書や調査チームの責任者を務めたカナダの法律家、マクラーレン氏などによると、モスクワのドーピング検査機関では少なくとも11年後半から昨年8月まで違反を隠蔽する手順が確立されていた。具体的には陽性反応を示した577検体のうち、スポーツ省がロシアの有望選手を中心に「SAVE(救済)」と指示した312検体で陰性と改ざんされたという。この312検体は全体のごく一部だといい、件数では陸上、重量挙げと続き、パラリンピックも上位に入った。報告書では「夏季と冬季五輪競技が恩恵を受けていた」と指摘した。国際大会ではソチ五輪のほか、13年世界陸上(モスクワ)、昨年の世界水泳(ロシア・カザン)が含まれている。
また、ソチ五輪の期間中、現地のドーピング検査機関は、ロシアのスポーツ省の指示により、陽性反応が出たロシア選手の検体を破棄し、保存していた陰性の検体にすり替えていた。調査チームは検体容器の封が不正に開けられたことを示す痕跡も発見したという。
ドーピング違反の隠蔽手順は金メダル3個と不振に終わった10年バンクーバー冬季五輪後、スポーツ省やロシア連邦保安庁(FSB)、反ドーピング機関が関与して出来上がった。また、プーチン大統領が任命した副スポーツ相がドーピング違反を推し進めるのに重要な役割を果たしていたと指摘している。
ソチ五輪でロシアは、参加した国・地域の中でトップの13個の金メダルを含む33個のメダルを獲得し、飛躍的にメダル数を伸ばした。