第24回参院選は10日投票が行われ、即日開票の結果、安倍晋三首相(自民党総裁)が目指す憲法改正に前向きな勢力は、非改選と合わせて改憲の発議に必要な全議席の3分の2を超えた。首相は自身の経済政策「アベノミクス」を継続する。自民、公明両党は首相が勝敗ラインに掲げた改選過半数の61議席を上回った。民進党は苦戦し、30議席台前半となった。
首相はアベノミクスへの支持と消費増税延期への理解を訴え、与党で改選過半数を勝敗ラインに設定した。自民党は改選50議席を超えて50議席台半ばを獲得。与党として改選過半数と、非改選76と合わせた参院過半数をともに確保した。首相は補選を除く国政選挙で4連勝を挙げ、政権基盤をさらに強固にした。
参院での憲法改正の発議には定数の3分の2(162)が必要だ。衆院ではすでに与党が3分の2を得ている。
改憲に前向きな自民党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の3党と、「加憲」を掲げる公明党の4党を合わせた改憲勢力の参院の非改選は計84議席。日本経済新聞の取材では、非改選の無所属らのうち、少なくとも4人は改憲に前向き。162からこれらを引いた残り74を改憲勢力の4党が上回ったため、3分の2を超えた。
選挙区では、全体の勝敗を左右する32の1人区(改選定数1)で自民党の強さが目立った。民進、共産、社民、生活の野党4党は「改憲勢力による3分の2の阻止」を掲げ、1人区で候補者を一本化。自民党と野党統一候補の事実上の一騎打ちの構図にしたが、効果は限定的だった。
自民党は沖縄で島尻安伊子沖縄・北方相、福島で岩城光英法相の2人の現職閣僚が敗北。東北でも秋田以外は野党統一候補に敗れたが、西日本を中心に21の1人区で議席を得て、勝ち越した。
改選定数2~6の複数区も自民党は堅調だった。公認を1人に絞った複数区は全て勝利した。2人擁立した複数区でも、東京と千葉に加え、9日付で2人目を追加公認した神奈川で2人が当選した。
民進党は改選定数2の茨城、静岡、京都、広島で自民党と議席を分け合った。だが改選定数4の大阪、同3の兵庫で議席を失うなど、1人区とともに苦戦した。
比例代表でも自民党の勢いが目立ち、13年に獲得した18議席は確保した。民進党は、旧民主党として惨敗した2013年参院選の7議席は上回ったが、10年の16議席には届かなかった。11日午前4時15分時点で、比例代表の残り3議席が確定していない。
公明党は選挙区で擁立した7人全員が当選し、比例代表も堅調だった。比例代表が非拘束名簿になった01年以降で最多となる計14議席に達した。
共産党、おおさか維新は改選議席を上回った。共産党は東京、おおさか維新は大阪と兵庫で、それぞれ選挙区の議席を獲得した。社民党は比例代表で1議席を確保。新党改革、こころは議席を得られなかった。
投票は全国約4万8千カ所の投票所で実施。一部の地域を除いて午前7時から午後8時まで受け付けた。選挙区225人、比例代表164人の計389人が立候補した。
今回の参院選は投票可能年齢を下げた「18歳選挙権」を国政選で初めて適用。人口が少ない隣接選挙区を統合する「合区」も導入した。