田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 11日に投開票が行われた参議院選挙は、多くの世論調査の通りに与党の圧勝に終わった。

 マスコミの多くが、「改憲勢力が三分の二をとれるかどうか」に選挙の焦点を特別に絞っていた。だが事前の世論調査では、どのメディアでも「社会保障」「雇用・景気」などの経済問題が圧倒的多数の有権者の関心であった。

 また他方で今回の選挙は、「18歳からの投票」が可能になった初の国政規模の選挙になったことでも注目された。なぜ18歳から投票権が引き下げられたかは、現状の日本の人口構成比をみると、例えば65歳以上の高齢者たちが人口の圧倒部分を占めていて、そのため将来の社会を担う若年者の関心や政治的権能をすくい取ることが難しくなってきた実情をいくばくか反映している。
世田谷区役所で期日前投票PRのデモンストレーションを行った女優の広瀬すずさん=7月4日、世田谷区
世田谷区役所で期日前投票PRのデモンストレーションを行った女優の広瀬すずさん=7月4日、世田谷区
 簡単にいえば高齢層が自分たちの既得権(特に年金給付が焦点)を失いたくないために、投票で事実上の結託をしてしまう“シルバー民主主義”が懸念されている。

 だが今回の参議院選挙の投票率は過去の歴史の中でも低水準であった。「憲法改正」も無論そうだが、経済問題や「18歳からの投票」なども多くの国民の投票行動を平均的な投票率を超えて刺激することはなかった。

 平均値も下がったが、若年者の投票率も毎回のように低迷したままである。もちろん年齢を引き下げたので、若年層の投票人口は増えているが、率としてみればいつもと同じく40%に届かず低迷したままであろう(これはこの原稿を書いている時点では、出口調査などからの推測でしかない)。対して高齢者の投票はこれまた毎回のように若年者に比して投票率でも上回り、また投票者数でもはるかに上回っている。例えば前回並みとすれば60歳代で70%に近く、20歳代のほぼ倍である。

 高齢者たちのシルバー民主主義は健在であったわけだ。もし今後、このシルバー民主主義を抑制し、若年層の利害をより反映する仕組みにするならば、次の方策が考えられる(参照:八代尚宏『シルバー民主主義』中公新書)。

1)被選挙権者の年齢を引き下げて若年層の利害をより反映することができる候補をたてることで、若年層の投票率を引き上げていく。
2)全年齢層での投票の義務化。

である。前者はかなり有望な選択肢である。後者は投票する事由、しない自由を含めて議論が多いだろう。