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対テロ、最大の武器は音楽

リッカルド・ムーティ氏=シルビア・レッリ氏撮影、ラベンナ音楽祭事務局提供

平和な世界訴え…伊の著名指揮者

リッカルド・ムーティ氏=シルビア・レッリ氏撮影、ラベンナ音楽祭事務局提供

 【ローマ福島良典】イタリアを代表する指揮者、リッカルド・ムーティ氏(74)が毎日新聞のインタビューに応じ「テロは文化を持たない無知から来る」と指摘し「日伊両国は文化の古い伝統を持つ。文化、特に音楽が(テロとの戦いの)最も重要な武器だ」と訴えた。ムーティ氏は3日にイタリア北部ラベンナで日伊国交樹立150周年の記念コンサートを開催。会場ではバングラデシュで起きた人質テロ事件の犠牲者を追悼して黙とうがささげられた。

     ムーティ氏はインタビューで「あらゆる種類の暴力、テロは、深い文化を持っていないという意味での無知に由来する。真の文化は調和、美、精神の気高き表現であり、高尚さと平安を損なうものとは相いれないのだ」と強調した。

     ムーティ氏は1997年、内戦からの復興途上にあるボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボでコンサートを開催。以来、世界各地の紛争地や被災地を訪ね「音楽を通じた友愛の懸け橋作り」を目指す「友情の道」事業に取り組む。今回の日伊両国の若手奏者による公演もその一環だ。

     ムーティ氏は「芸術の中でも音楽には人々を結びつけ宗教、文化、伝統、人種、言葉の壁を乗り越える大きな可能性がある。音楽は分断を超えるものだからだ」と語った。

     日伊の絆を確認する今回のコンサートの2日前、ダッカで両国民が巻き込まれる人質テロ事件が起きた。「文化によって問題をただちに解決することはできない。だが、文化は長期的には武器になる。社会をより気高い水準に引き上げることができるからだ」

     ムーティ氏が若手の育成に心血を注ぐのは「若者こそ未来」という思いがあるためだ。「(文化という)根を切れば、木は死んでしまう。若者は歴史的なアイデンティティーを自覚する必要がある。それによって、未来に前進することができるのだ」と言う。

     最後に「夢は何か」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。「私は戦中の41年の生まれだが、戦後は戦争のない時代を生きてきた。けれども今、世界で平穏な場所を探すのが難しくなっており、孫たちの将来が心配だ。夢は平和な世界を作ることだ」

    日伊国交樹立150周年記念コンサートで、両国若手奏者の合同オーケストラを指揮するリッカルド・ムーティ氏=2016年7月3日、シルビア・レッリ氏撮影・ラベンナ音楽祭事務局提供

    ◇リッカルド・ムーティ◇

     1941年、イタリア・ナポリ生まれ。ミラノ音楽院卒業。80年から92年まで米フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を務めた。86年から2005年までイタリア・ミラノのスカラ座の音楽監督を務め、10年に米シカゴ交響楽団の音楽監督に就任。

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