星出宇宙飛行士ら、地底800mの洞窟で訓練

危険な未知の領域で集団で生活させる訓練プログラム「CAVES」

2016.07.08
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欧州宇宙機関(ESA)の洞窟訓練「CAVES」には、JAXAの星出彰彦飛行士をはじめ、世界の5つの宇宙機関に所属する6人の宇宙飛行士が参加している。 (PHOTOGRAPH BY VITTORIO CROBU, ESA)
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 宇宙空間は過酷な環境だ。たった一つのミスがミッションを台無しにし、乗組員全員の命を危険にさらすこともある。(参考記事:「火星を周回する宇宙ステーションの計画を発表」

 欧州宇宙機関(ESA)は、こうしたリスクを考えて、宇宙空間と同じくらい危険な未知の領域で宇宙飛行士たちに集団で生活させる訓練プログラム「CAVES」を考案した。訓練の舞台となるのは、イタリアのサルデーニャ島の地下数百メートルに広がる複雑な形の洞窟だ。

 米国、日本、中国、スペイン、ロシア出身の6人の宇宙飛行士からなる国際チームは、7月上旬に洞窟内に入った。6日間のミッションでは、科学実験を行いながら地下800メートルの洞窟内にベースキャンプを設置することになっている。

 ESAのウェブサイトによれば、CAVESでは「バディ・システム」を採用し、宇宙飛行士たちは常に2人1組になって互いに助け合いながら行動する。飛行士の教員たちは、「急がば回れ」、「装備をチェックし、信頼しろ」、「自分とバディの居場所を常に意識しろ」と、呪文のように繰り返し言い聞かせる。「隔離された未知の危険な環境をどのようにして探査するのか、チームで学んでいくのです」。(参考記事:「息をのむほど美しいISSからの写真15選」

 宇宙飛行士たちの洞窟内での体験は、動画ブログを通じて地上の人々に提供。NASAの宇宙飛行士で生物学者のジェシカ・メイア氏は、最近投稿した動画の中で、「洞窟内には信じられないほど多様な生物が暮らしています。彼らは非常によく環境に適応しています。目がまったく見えず、体にいっさい色素がない動物もいます」と報告している。

 洞窟探査の一部は、国際宇宙ステーションでの厳格なスケジュールを模倣した構成になっている。宇宙飛行士がミッションコントロールに連絡してリストの中から必要な品物を要求する「補給ミッション」もある。洞窟ミッションの継続に必要な品物をすべて揃えるには、体積と重量の制限を考慮して、慎重に計画する必要がある。

 宇宙飛行士が洞窟内での訓練を終えて地上に出てくるときには、宇宙飛行を終えて地上に戻ってくるときに似た感覚の過負荷を経験するようだ。

「匂いがなく、湿度が一定で、太陽の光がささない環境で何日も過ごした後に地上に戻ってくると、いちどに押し寄せてくる感覚に圧倒されるのです」。(参考記事:「340日ぶり宇宙からの帰還、現場はカオスだった」

文=Mark Strauss/訳=三枝小夜子

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