米警察官銃撃の容疑者 警察への怒り募らせ犯行か

米警察官銃撃の容疑者 警察への怒り募らせ犯行か
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アメリカで黒人男性が相次いで警察に射殺されるなか、南部テキサス州で警察官5人が銃撃されて死亡した事件で、容疑者は地元に住む25歳の黒人の男だったことが分かりました。警察は、男が警察への怒りを募らせ犯行の計画を練ったとみて調べています。
アメリカでは5日から2日連続で黒人の男性が警察官に射殺される事件が起き、7日にはテキサス州ダラスで警察に対する抗議デモが行われましたが、そのさなかに警察官12人が銃で撃たれ、このうち5人が死亡しました。
この事件で警察との銃撃戦の末に死亡した男の身元について、警察は事件から一夜が明けた8日、ダラス近郊に住む黒人のマイカ・ジョンソン容疑者(25)と特定したと発表しました。またジョンソン容疑者の住宅を捜索した結果、ライフル銃と実弾、それに爆弾を作るための材料が見つかったということです。
警察によりますと、ジョンソン容疑者は銃撃戦のなかで交渉にあたった警察官に「黒人男性が死亡した一連の事件に怒りを覚え、特に白人の警官を殺害したかった」と話していたということです。またジョンソン容疑者は抗議デモの警備にあたっていた警察官らを建物の上の階から狙って銃撃したとみられています。このため警察はジョンソン容疑者が警察への怒りを募らせデモの経路を調べるなど犯行の計画を練ったとみて調べています。
アメリカでは事件をきっかけに人種間の溝が広がりかねないと懸念されていて、リンチ司法長官は8日、声明を発表し、「FBI=連邦捜査局などとともに支援を行い、計り知れない悲劇によって深く傷ついた地域社会を癒やすとともに、警察官との信頼構築に取り組まなければならない」と述べました。

ホワイトハウスで半旗

アメリカ南部テキサス州で警察官5人が銃撃されて死亡した事件を受けて、オバマ大統領は8日、犠牲者に哀悼の意を表するため、今月12日の日没までの間、ホワイトハウスや全米の政府機関、それにアメリカ海軍の艦船などに半旗を掲げるよう指示しました。

下院議長 事件を強く非難

共和党のライアン下院議長は8日、議会で声明を読み上げ、「呆然としており、激しい怒りに包まれている。われわれを守ってくれる人に対する攻撃は、すなわち私たち全員に対する攻撃ということだ」と述べ、警察官ら5人が銃撃されて死亡した事件について強く非難しました。そのうえで、「さらなる怒りによって、われわれは分断されるべきでない。今回の容疑者は、決してわれわれを代表する存在ではない。銃犯罪の議論を巡っては、共和党と民主党との間では意見の隔たりもあるが、われわれは団結していくという視点を見失ってはいけない」と述べ、冷静に対処するよう呼びかけました。

米警察と黒人社会

アメリカで黒人に対する警察官の対応が問題となるケースが後を絶たない背景には、黒人への差別的な意識があると指摘されています。2013年にはニューヨーク市警の警察官が不審な人を対象に行う身体検査の8割余りが黒人やヒスパニック系に集中していたとして、ニューヨークの連邦地方裁判所が人種差別的で憲法に違反していると判断しました。また、おととし、中西部ミズーリ州で白人の警察官が黒人の少年を射殺した事件を受けて、調査を行ったアメリカ司法省は、地元の警察では逮捕された人や捜査の過程で体を押さえ付けられるなどした人の9割前後を黒人が占めているとして、黒人への差別が横行していたと指摘しました。
こうしたなか、アメリカのオバマ大統領は警察と黒人社会の信頼構築を目指した対策を打ち出し、現場での警察官の対応を検証できるようにするため、各地の警察に警察官に装着させるカメラおよそ5万台を導入する予算として、3年間で7500万ドル(日本円で75億円余り)を準備し、去年5月にはそのうち2000万ドルが提供されました。カメラを導入した警察の中には、警察官が武器や力を行使する割合が減ったり、警察官に対する苦情が減ったりしたとして、評価するところもあります。一方で、その後も、黒人が射殺されるなどの事件が相次いでいることから、さらに抜本的な改革が必要だとする指摘も出ています。

国連事務総長も非難

国連のパン・ギムン(潘基文)事務総長は8日、報道官を通じて声明を発表し、「ダラスで起きた襲撃事件を非難する。このような暴力は決して正当化できない」としています。そのうえで、この事件に先立つ5日と6日に、アメリカ国内で黒人の男性が警察官に相次いで射殺された事件についても触れて「公正で徹底的な捜査をすべきだ。この事件は、法律を執行する際に人種によって不平等な扱いをすることなど、人種差別に立ち向かう必要があることを改めて思い起こさせる」としています。