スウェーデン大使館でシュールストレミング?
「世界一臭い食べ物」として有名なスウェーデンの食べ物、シュールストレミング。
今や名前は誰もが知っていると思いますが、メディアで目にするのは罰ゲーム的な扱いばかり。
それって、スウェーデンの伝統的な食べ物、食文化に対する冒涜じゃないですか?
それに、日本の蜂の子とかイナゴとかもゲテモノ的な扱いをされがちですが、食べてみると実は結構美味しいのです。
すごく臭いといっても……私はくさやとかナンプラーとか塩辛とか、魚の発酵した系の臭いは嫌いじゃないので、シュールストレミングも結構いけるんじゃないかな?
と、思ってやってきたのはスウェーデン大使館。
こちらで行われている「SWEDEN TRAVEL DAY 2016」なる旅行業界向けの観光PRイベントにて、シュールストレミングが食べられるらしいんですよ。
こちらは、六本木にあるおしゃれなスウェーデン大使館。
さっそく入ってみましょう。
会場ではスウェーデンのいろいろな会社が自社のサービスや新商品のPRをしています。今注目の北欧スウェーデンとあって、100名を超える旅行業界からの参加者で会場は賑わっていました。それにしてもスウェーデン人は美男美女が多い! 日本人のスタッフ、来場者さんたちもおしゃれです。
おしゃれな馬(ダーラヘスト)もありました。
こんなおしゃれな場所でシュールストレミングが食べられるとは!
ちゃんと引換券ももらいました。ここにも馬がいますね。
シュールストレミング試食会は最後の方なので、それまで会場をうろうろしました。
あ、お菓子がありましたよ!
しかも、このイケメンさんがお茶を出してくれます!
彼は、今回のシュールストレミング試食会を担当する北欧料理店「リラ・ダーラナ」のホールスタッフ、スウェーデン人のアストロム・エリアスさん。お客さんにもファンが多そうですよ!
こちらのお菓子は、全部お店の自家製だそうです。
とりあえず、中庭でお菓子をいただいたりしてみます。
左側の丸いのはチョコレートの中にオートミールを入れて練った、スウェーデンの伝統的なお菓子、チョコレートボールです。右はフロランタン。
美味しいわ~。
そして、この中庭の一角にはこんなものが……。
近寄ってみると……
噂のシュールストレミングです!
缶がこんなに膨らんでいます!
シュールストレミングはスウェーデン産のニシンの塩漬けを缶に入れて発酵させた食品です。
加熱殺菌をしていないため、缶に入れた後も発酵が進みます。常温で置いておくと、発酵が進んで缶が爆発する恐れがあるので冷蔵保存が必須です。
これは、すでに結構膨らんでいるのでかなり発酵が進んでいるはずです。
「リラ・ダーラナ」の遠藤店長にお話をうかがってみました。
「これは、もう賞味期限ぎりぎりくらい、2、3年は経ってるものですね。今回はこれと、もう少し新しいものも用意しています」(遠藤店長)
スウェーデンではシュールストレミングはどのようにして食べるのですか?
「これから暖かくなってくると、屋外でパーティをして食べることが多いですね。住宅地でやると苦情が出るので(笑)、人里離れた野原みたいなところでピクニックとかバーベキューみたいなノリで食べるんです」(遠藤店長)
さて、試食会の準備ができたそうです。
さあ、シュールストレミングを食べてみよう!
ちなみに場所は、最初中庭にセッティングされていましたが、よりひらけた場所でということで、道路側の駐車場に変更されていました。
おしゃれなプレートも用意されてます!
この上に、これから開缶されるシュールストレミングが乗せられるのです。
一番下にトゥーンブロートというスウェーデンの伝統的な薄いパン、その上に、サワークリーム、刻んだ赤タマネギ、茹でたじゃがいも、トマト、ディルが乗っています。
この付け合わせでオープンサンドにするのが基本的な食べ方だそうです。
さて、いよいよシュールストレミング開缶です!
ここで、遠藤店長、ホールスタッフのエリアスさんに指示を出します。
「今日は君が開けてね」(遠藤店長)
「え!? Meが? 嘘でしょ!?」(エリアスさん)
エリアスさんは、シュールストレミング開けたことあるんですか?
「ないですよ! 食べたこともないですよ! (悲鳴)」(エリアスさん)
意外なことに、スウェーデン人でも食べたことがない人が多いそうで、特に若い人では、私が聞いた中では食べたことがある人は一人もいませんでした。
さて、開缶は、飛び散り防止のため、水の中で行われます。
最初に開けるのは、この缶。
これは製造後1年くらいの、まだ発酵がそれほど進んでいないものです。
それでも、膨らんでいますが……。
シュールストレミング大好きな人代表、スウェーデン商工会のハンスさんによる、パーティ開始の挨拶です。
「みなさん、シュールストレミングの写真を撮るのもいいのですが、今日のメインイベントはシュールストレミングを食べることです! どうぞ、みなさん召し上がってください!」
そして、覚悟を決めたエリアスさん、やる気満々で開けますよ!
いきます!
ぶっしゅ~!
缶に穴が開いた瞬間、ニュルニュルのシュールストレミングの身が飛び出してきました!
そして、同時にすごい臭いが!
「うわ~! 臭い!」「ひ~! 何、この臭い!」「Oh! terrible smell ! 」
集まったお客さんたちが口々に叫びます。
この臭いを例えるなら……。
タマネギの腐った臭いと魚の腐った臭いが混ざったような……。
生ゴミを数日間、放置した感じといえば良いでしょうか……。
アンモニア臭も混ざり、確かにくさやよりも相当臭いです。
近寄って写真を撮っていた私も、思わず一歩あとずさりしました。
世界一臭い食べ物、なめちゃいけませんね!
そして、開いた缶を、遠藤店長にバトンタッチ!
「誰か、手を拭くものくださ~い!」(エリアスさん)
シュールストレミングの臭いは、手についたものは洗えば結構落ちるのですが、服につくと洗濯しても落ちないそうです。
と、遠藤店長がおっしゃっていましたが、私の手は帰りの電車の中でも異臭を放ち続けました!
エリアスさんの手の臭いは無事取れたのでしょうか?
さて、いよいよシュールストレミングをいただいてみましょう。
このように切って、
プレートの付け合わせの上に乗せ、配ります。
最初に食べるのは、ハンスさん。とてもうれしそうです。
「うん、美味しい! この写真は明日の新聞に載るからね!」(ハンスさん)
盛り付けがきれいなせいか、みなさん躊躇なく、どんどん持っていきます。
しかし、実際食べてみるとどうなのでしょう?
こちらは、豪華客船によるクルージングの会社「バイキングライン」のフィリップ・ウネヴィックさん。
シュールストレミング、初挑戦です。
感想はいかがでしょう?
「う~ん、これは、ちょっと、難しいですね……」(フィリップさん)
あまりお気に召さなかった様子です。
シュールストレミングはスウェーデン人の中でも「大好き」と「大嫌い」がはっきり分かれる食べ物だそうで、やはり日本でいうと、くさや、このわたレベルの珍味なのかもしれません。
もちろん私の分も貰ってきましたよ!
特別に、丸のままのシュールストレミングも1枚貰ってきました。
このように、きちんと形が残っているものは発酵がそこまで進んでいなくて、比較的食べやすいそうです。
手でつまんでみると、ぷ~ん、と臭います。生ゴミっぽいです。
そして、でれでれ、ぬるぬるしています……。
思い切って、食べてみます。
パクッ!
まずひと口で、半分食べました。
舌触りは、ぬるっとしています。結構しょっぱいのですがアンチョビほどではありません。食感は「この魚、腐ってる?」って感じです。しかし、表面は腐っている臭いなのですが、噛みしめるとコクと旨味があります。
臭いはハードですが、そのわりに味は普通です!
この発酵具合なら普通に食べられます。もっとドロドロに発酵していたらわかりませんが。
取材時は、花粉症で鼻が詰まっていたのも幸いしたかもしれません。
残りの半分もきちんと食べて、お次はオープンサンドです。
ほら、おしゃれな料理にしか見えない!
パクッ! もぐもぐもぐ……。
これは、いける!
この付け合わせが私の好みドンピシャなせいか、普通に美味しくいただけます!
塩気がちょうど良く、タマネギやディルで臭いも抑えられてすごく良いツマミになりそうです。
某大型家具店で食べたサーモンのオープンサンドよりもずっと好みです。
なあんだ、シュールストレミングって美味しいじゃん。
さて、そうこうしているうちに、3缶目、一番発酵の進んでいた缶が開けられました。
ああっ。
なんと、発酵し過ぎて完全に液状化してしまっていました。
そして、臭いは最強、最凶でした!
さすがにここまでくると食べられる気がしません!
保存状態によっては、このように液状化してしまうことがあるそうです。
おまけ。
最後に液状化してしまったシュールストレミングの代わりに、オイルサーディンを乗せたものも出していただきました。
こちらは普通に美味しかったのですが、シュールストレミングを食べた後だと、どこか物足りなく感じてしまいました。
さて、シュールストレミングを食べてみたくなったみなさま、「リラ・ダーラナ」では通常メニューでは出していませんが、購入はできます。価格は5,000円程度。(変動があるのでお問い合わせください)パーティなどのご相談もどうぞ。他のネットショップなどでも取り扱いがあるので、通販での購入も可能です。臭くて美味しい体験を、あなたもぜひ!
お店情報
北欧料理 リラ・ダーラナ
住所:東京都港区六本木6-2-7 ダイカンビル2F
電話:03-3478-4690
営業時間:ランチ11:30~15:00(LO 14:30)、ディナー18:00~23:00(LO 22:30)
定休日:日曜日、祝祭日
書いた人:
工藤真衣子
カメラマン。美しい女性が好きなのでグラビア、音楽が好きなのでライブ写真、映画やドラマが好きなのでテレビドラマのスチール写真、美味しい食べ物が好きなのでグルメ雑誌など、素敵なものを愛を込めて撮るお仕事をしています。趣味は美味しい料理を作って食べること。