選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる夏の参院選を前に、政治や社会に関心を高める主権者教育をめぐり、道内の公立高の教員が困惑している。国や道から学校での「政治的中立性」を求められ、テーマ選びに四苦八苦しているからだ。一方で、道内の私立高は模擬投票で具体的な国政選挙を積極的に取りあげ、公立高との差が際立っている。

 十勝管内のある道立高校は昨年12月、北海道選挙管理委員会(道選管)の出前講座を行った。当初は道選管の実施要領に沿って2014年の衆院選道11区(十勝管内)の候補者の政策を生徒に比較させて模擬投票を行う予定だった。

 ところが、道選管から「テーマが生々しい」と計画の変更を提案され、選挙権年齢を「15歳以上」「18歳以上」などと主張する架空の候補者を選ぶ内容に変更したという。

 道選管十勝支所は変更を提案したことを認め、「生徒の事前学習が不足していて、政策を比較するところまではできないと判断した」と説明する。しかし、同校の教諭は「架空の選挙では生徒の反応もいまひとつだった。今後も主権者教育をするたびに圧力がかかるのでは」と懸念する。

 私立高の教員も公正、中立を守る必要はあるが、公立と状況は異なる。私立クラーク記念国際高(本校・深川市)は4月19日に札幌、20日に深川で衆院道5区(札幌市厚別区、石狩管内)補欠選挙の候補者を選ぶ模擬投票を行った。

 生徒からは「今までは選挙に関心が薄かったけれど、リアルに感じられた」との声が出た。同校は参院選を題材にした模擬投票を、道内外の約30校舎で行う予定だ。

 3月末には東京都内で教員向けの研修会を開催した。道内に勤務する男性教諭2人を含めた同校の教員22人が参加。教員が進行役に徹するグループワークが紹介され、生徒も参加して模擬投票も行った。

 札幌大通キャンパスの中野陽介教諭(32)は主権者教育をどのように進めるべきか悩ましさを感じていたというが、研修後は「政治的中立性に配慮した、このやり方なら気後れしないでやれる」と手応えを口にした。(報道センター 石井努、中秋良太)

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