(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月26日付)
団塊の世代が次々に職場を離れている。人口の4分の1がすでに65歳を超え、時間を持てあましている。海外旅行の輝きは急速にあせており、家計の貯蓄はものすごい額に達している。
日本では、史上最大の人数を誇る世代が引退後に使うお金、いわゆるシルバーマネーを手に入れようと医療用機器メーカーから化粧品メーカー、スポーツクラブ、カラオケ機器メーカーに至るさまざまな業種の企業が、取りつかれたように競い合っている。
リゾート会員権の販売で国内トップを走るリゾートトラストによると、この争いで最も価値のある戦利品は、日本の週末を支配する企業の手に落ちるという。同社は40年以上前から、要領よく徹底的にリラックスする短期間の休みの魅力を、仕事中毒で疲れ切ったホワイトカラーに説くことでそれを成し遂げようとしてきた。
同社のリゾート施設の利用客は、そのほとんどが24時間しか滞在せず、その時間内に体の隅々までリフレッシュさせる。この会社を1973年に仲間と共同で立ち上げた伊藤勝康社長によれば、リゾートトラストの施設にやって来ることはさりげなく豪華な、かつ洗練された外国のリゾート施設を訪れるような感じでなければいけないという。
「西洋と違って、日本には長期休暇を取る伝統がない」 そういう現状をもたらしている社会の期待や職場のいじめにはあまり深く立ち入りたがらない伊藤氏は、こう語る。「日本人も西洋人も、リゾート地の環境に身を置くことを楽しみたいと思っている。ポイントは、日本人はそうしたことにごく短い時間しか使いたがらないということだ」