安倍晋三政権が成長戦略の目玉にしようと検討を進めている人工知能(AI)をめぐり、霞が関で主導権争いが起きている。研究開発から企業の事業化、倫理面でのルール作りなど複数省庁の所管にまたがるうえ、囲い込めば潤沢な予算の確保が見込めるからだ。ここにきて官邸が省庁横断の推進体制の構築に動き出したが、政府の足並みが乱れれば先行する欧米との差が開く一方なだけに、司令塔設置を急げとの声も上がっている。
「ちぐはぐな対応だ。司令塔は一体どこなのか?」
12日開かれた自民党の人工知能未来社会経済戦略本部で、参加議員から政策説明にきた省庁の担当者に対し厳しい声が上がった。
政府は5月26、27日の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)と連動する形で、「新三本の矢」を強化した新たな成長戦略を打ち出す方針だ。なかでも、AIやビッグデータなどを活用した「第4次産業革命」の実現は、政権が掲げた名目国内総生産(GDP)600兆円達成の鍵を握る。
とはいえ、AIが関わる分野は文部科学省(先端技術の研究開発と教育)、総務省(情報通信)、経済産業省(企業の事業化)、厚生労働省(雇用対策)など複数の省庁にまたがる。各省が存在感を主張するため一貫した戦略が見えにくくなっているのが現状だ。
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