パートナー企業「リツアンSTC」。大手企業中心にエンジニア派遣を行う会社なのですが、ここがなかなか赤裸々で面白いんですよ。社長ブログから記事を転載させていただきます。
最近、応募者の方からリツアンにはボーナスはないのと聞かれますが・・・
残念ながらリツアンにはボーナスはありません。
確かに夏や冬のボーナス時期を向かえるとボーナスが欲しいなと思われるかもしれませんがボーナスは危険ですよ。特に派遣で働く場合は、その点を総合的に判断してほしいと思います。私自身が派遣社員だったら絶対に時給で働くことを選択します。
その理由は、なぜか?まず、ボーナスの危険性から解説します。
このボーナスの危険性は次の2点に集約されます。
(1)ボーナスの支給は義務ではない
(2)ボーナス支給日の在籍要件
ボーナスの支給は義務ではない
ボーナスは、法律で支給が義務付けられているものではありません。
通達では、「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいう」と定義されています。支給額が予め確定されていないということは、支給額が増減したり、不支給もあり得るということです。賞与は予め支給額を約束している賃金と違って、支給の有無や支給する場合の金額は、原則として会社が自由に決定することができます。
引用:『キノシタ社会保険労務士事務所』
つまり、昨年のボーナスは夏冬計80万円だったものが、今年は半額の40万円、あるいは0円ということもありえるのです。
ただ、雇用契約、労使協定、就業規則などで支払いが明確になっているときは違うようです。
例えば、「基本給の○ヶ月分の賞与を支払う」としていたり、年俸制で「年俸の16分の4を賞与として支払う」としていたりして、賞与の金額(の決定方法)を具体的に約束している場合は別です。就業規則や雇用契約書に基づいて、約束したとおりの金額の賞与を支払う義務があります。
引用:『キノシタ社会保険労務士事務所』
つまり、上記のように具体的な支払い根拠が示されている場合は、ボーナスではなく賃金の一部として支払い義務が発生するのです。
しかし、一般的な企業のボーナス規定は、「賞与は原則として○月及び○月に支給する。ただし、会社の業績その他やむを得ない事由がある場合は、支給時期を変更し、又は支給しないことがある」としているような場合が多いように思います。この場合は、業績等によって不支給とすることも可能になってしまうのです。
ボーナスの支給日在籍要件
また、賞与の支給日在籍要件というのもあります。これはボーナス支給日に会社に在籍していなければボーナスを支払わなくてもいいというものです。
社員の立場に立ってみると、「賞与は、支給対象期間の勤務に対して支給するのだから、支給対象期間に勤務していれば、賞与をもらう権利がある」と考えるでしょう。
しかし、法律的な判断はそうではありません。就業規則(賃金規程)に、「賞与の支給対象者は、支給日現在在籍している従業員に限る」というように、賞与の支給日に在籍していることを条件としている場合は、不支給とすることができます。
労働者にとっては、ボーナスは定の対象期間において自分が頑張った会社からのご褒美です。なので仮に会社を辞めた後でも報奨されてもいいものだと思ってしまいますが、現実的にはやはり難しいようです。
そして、派遣労働者にとっては、この賞与の支給日在籍要件というのは大きく関係します。
派遣社員の方々は、新卒から定年まで同じ派遣会社で勤める割合は圧倒的に少ないので、ある意味で退職することを前提に考えなければなりません。退職する際に賞与の支給日在籍要件は大きく関係します。
例えば、7月と12月の2回支給の場合は、それぞれの査定期間は4月~9月、10月~3月だったとします。
7月賞与は10月~3月の査定期間、12月賞与は4月~9月が査定期間、つまりそれぞれ3ヶ月の空白期間が存在します。
この空白期間中に企業は評価のまとめやボーナスの支給額の計算をするのですが、ボーナスを労働対価の一部と考えるのならば、仮に賞与をもらってから会社を辞めても、結局は空白の3ヶ月分の報奨はいつまでたっても派遣社員は貰うことはできません。
しかも、この3ヶ月分の対価は馬鹿にできない金額なのです。
基本給と外勤(職務)手当の合算が月給25万円だとします。
入社前にボーナスは夏冬それぞれ2ヶ月分だと聞いていました。なので月収25万円×12ヶ月=300万円、夏冬のボーナスがそれぞれ25万円×2ヶ月分(夏50万円+冬50万円)で年収は400万円です。
年収400万円の場合の1ヵ月分の賞与積立(支払い金額)は、夏冬賞与の100万円÷12ヶ月で8万3333円ということになります。
8万3333円の3ヶ月分は25万円。この月収と同額を派遣社員は貰えないのです。
賞与は、既に住宅や車のローンなどの計算に組み込まれたり、普段の生活の補てんに見込まれたり、私たちの生活の一部になっていますが、ただその法的な根拠は非常に曖昧であり、また派遣社員にとってはデメリットが大きい制度なのです。
例をあげてみましょう。
例えば、ボーナスがない技術系派遣会社「A社」とボーナスがある「B社」を比較すればわかりやすいかと思います。
条件は、A社、B社ともに派遣料金は4,000円/1h、残業時間は0h、マージン率は同じ30%です。
この場合はA社の給料の内訳は4,000円×還元率70%=時給は2,800円、月収は44万8千円、年収は537万6千円となります。
一方で、B社の場合も年収は、あたりまえですが同額の537万6千円になります。この年収から月収及び賞与などを分ければ、月収は33万6千円、夏冬それぞれ賞与は2ヶ月分として67万2千円。
残業がない職場でしたら年収にA社もB社も格差はありません。
ただ、仮に残業を1時間でもすれば同じマージン率でも年収に格差をうみます。
下記の表を見ていだければわかりますが、A社の場合の残業単価は3,500円、一方でB社の場合の残業単価は2,625円。つまり1時間当たり875円の差となります。残業単価の計算の根拠になるのは基本給などの月収です。賞与は含まれませんから月収が多いボーナスがないA社の残業単価は当然高くなります。
これを仮に毎月30時間の残業を見込んで計算すれば年収で315,000円にもなり、B社の派遣社員の月収にも匹敵する金額になります。私が派遣社員は時給制のほうがお得というのはこういった理由からです。ボーナスが支給されるB社のエンジニアの方は、もしかするとボーナスがないA社のエンジニアの方よりも1ヵ月分に相当する月収を損している可能性もありますから。。。
そして、労働者にとって高い月収は様々なメリットをうみます。例えば、傷病手当金。この傷病手当金は、本当に労働者を守ってくれる手当ですので是非覚えっておいて下さい。
傷病手当金とは、仕事ができなくなったときに受けられる代表的な保障が傷病手当金です。もし病気で入院し、仕事ができなくなったら収入が減ってしまいます。その場合に健康保険から受けられる保障が傷病手当金です。業務外の病気やケガのために働けないで仕事を休み、給料が支払われない場合や給料が下がった場合、その間の生活保障をしてくれる所得保障・休業補償の制度です。
引用:『保険の教科書』
そして、この傷病手当金の支給額を計算する際に根拠となるのが標準報酬日額。傷病手当は、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額を1年半にわたり保障してくれます。標準報酬日額は、標準報酬月額を30で割って算出します。つまり、仮に年収が同額でも月収が多いほうが労働者にとっては保障額は多くなるのです。
また、縁起が悪い話ですが失業保険を算出する際にもボーナスは含まれません。毎月の月収が多いほうが失業手当も高くなります。ボーナスからは雇用保険が引かれているのにおかしな話ですが、相互扶助精神のしくみでなりたっていて、様々な歴史のなかで今のような制度になったようです。
つまり、病気やケガで会社を休まざるを得なかった場合や会社を離職した場合など様々な部分で月収が高いほうが労働者にとってはメリットが大きいのです。
上記のように残業単価からも、いざというときの保障面からも、派遣で働く場合は賞与がない時給制をおすすめします。
(from 「ピンハネ屋と呼ばれて」)
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