「腰が痛い!」50歳を過ぎると、腰が痛くなったことがない人のほうがまれかもしれません。ここでは、急に腰が痛くなったときに、その原因別の対策方法、そして緊急時の応急処置の方法についてお伝えします。「このまま痛みが続いたらどうしよう…」と心配している方でも、これを読めば安心していただけるはずです。
目次
■1.腰痛、痛みの種類
1-1.突然起こった急性の痛み「急性腰痛」
1-2.いつの間にか起こった慢性の痛み「慢性腰痛」
1-3.動いている時に痛みが強くなる「運動時痛」
1-4.寝ていても痛みが続く「自発痛」
■2.腰痛の原因とその対策
2-1.猫背
2-2.座りっぱなし
2-3.布団が合ってない
2-4.体重増加
2-5.ストレス
1.腰痛、痛みの種類
1-1.突然起こった急性の痛み「急性腰痛」
急に腰が強く痛むことを「急性腰痛」と言います。いわゆる「ぎっくり腰」と呼ばれるものがそれにあたります。痛みのきっかけとなるのは、重いものを持つ、かがむ動作をする、腰をねじったりするなどの動作が引き金になることがありますが、とくにそうしたきっかけもなく急に痛みが出ることも多くあります。あるいは、腰の骨に病変があったときに、ちょっと無理な姿勢や動作をしたために、急に痛みが出ることもあります。
急に出る痛みにびっくりするかもしれませんが、そのほとんどは命にかかわるものではないことがほとんどです。しかしながら、中には危険な病気が潜んでいることもあるため、特に長く続くときにはその原因を知ることが重要になってきます。
1-2.いつの間にか起こった慢性の痛み「慢性腰痛」
いつの間にか痛みが出ていたような腰痛は、慢性腰痛と呼ばれます。いわゆる腰痛症と呼ばれ原因不明のことも多い腰の状態の総称です。慢性腰痛の場合、いわゆる重苦しい痛みが3ヶ月以上続いて、動くことはできても、いつも腰の痛みが気になるような状況に悩まされます。体の奥に響くような痛みが強くなったり弱くなったりしながら繰り返すケース、あるいは徐々に強まっていくケースと様々です。またいつから腰痛になったのかはっきりせず、いつの間にか腰痛に悩むようになったり、また何かをきっかけに再発させて長い間腰痛に悩まされる方が多いようです。
また、慢性腰痛の場合は直接の原因がわからない場合も多く、医者に行っても「腰痛症」という原因不明の痛みということで片付けられてしまいます。そのため、治療が難しい場合がほとんどです。
慢性的な腰痛は、腰への負担の蓄積や無理な姿勢により、筋肉、骨、神経にトラブルが起こっている状態、あるいは内蔵疾患や心理的な背景が要因とも言われています。以前は痛みがあるときには安静にという指導がされていましたが、ここ数年は安静にする事は逆効果とも言われ始めています。横になっているよりも、動ける範囲で活動ておくほうがよいようです。
1-3.動いている時に痛みが強くなる「運動時痛」
さらに、動いたときに痛みが強くなる「運動時痛」なのか、それとも寝ていても痛いのか「自発痛」なのかも、大きな分かれ目のポイントです。歳を取って腰が痛くなるのは通常、動くと痛くなる運動時痛の場合がほとんどです。お辞儀をする、後ろへ反るといった特定の動きだけ痛む場合もあれば、体を動かすだけで痛む場合もあります。
安静にしていれば痛みが軽くなるという場合、腰椎の老化による腰の痛みである『運動時痛』であり、腰痛の方によく見られる症状といえます。
1-4.寝ていても痛みが続く「自発痛」
逆に、じっとしていても痛いのは「自発痛」と呼ばれます。痛みと体の動きや姿勢は関係がありません。この場合は、感染や腫瘍などの可能性も考える必要があります。どんな体勢になっても痛みがひかないとすれば、ひどい筋肉の炎症や腰椎捻挫位、骨折、重度の椎間板ヘルニアの可能性があげられます。
あるいは腰椎以外の内臓の病気が隠れている事も考えられます。
たとえば腰痛という形で痛みが出る内臓疾患としては、「腎盂腎炎」などがポピュラーです。これで「ひどい腰痛になってしまった」と勘違いをする方が少なくありません。
いずれにしても、痛みがある場合は局部的に痛みがあるのか、その痛みが足の方に派生しているのか、動かした時だけ痛みが足の先まで到達するのか、など状況を詳しく抑えておくとよいでしょう。
2.腰痛の原因とその対策
2-1.猫背
猫背は腰痛を引き起こすことが多いのですが、そもそもなぜ、猫背になるのでしょうか。あなたももしかしたら、長い時間机に座っての仕事(パソコンなど)で、つい前かがみになっていることが多いかもしれません。こうした姿勢が、猫背の原因になっていることが多いのです。
また、普段あまり運動をしなかったり、背骨を支えている周りの筋肉が弱くなっていることも、猫背になる原因と言われています。どうしても筋肉が衰えると、背骨を支えられなくなりますので、前かがみになって、猫背になってしまいます。
前かがみの猫背になると、背骨が曲がりすぎてしまいます。ですので、背中の筋肉を強化することで、猫背になりにくくすることができます。ですが、普段の生活の中で背中の背筋を鍛えるのはなかなか難しいので。まずは「猫背を直そう!」という意識を持ち続けることが大切です。
良い姿勢をしようとして、背中の筋肉を伸ばそうと胸を張りすぎてしまう人がいます。そうすると背骨が反ってしまって、お腹が前にポッコリ出てしまいます。それでは上に伸びるというよりも、むしろ前に出ているだけになってしまい、それでは良い姿勢とはなりません。
つまり、背筋を伸ばそうとするのではなく、骨盤とお腹を意識することが大切なのです。これで良い姿勢を作ることが出来ます。鏡の前で簡単にできますので、あなたもぜひやってみて下さい。
2-2.座りっぱなし
パソコンの仕事などで一日中座りっぱなしの人は、悪い姿勢をしていることによって、腰に負担をかけていることが痛みの原因と考えられます。腰や背中を丸くした状態で座っていると、腰に負担がかかりますし、その悪い姿勢を続けていると、腰痛以外の痛みが出ることもあるので、注意が必要です。
同じ姿勢を維持していることで、筋肉が固くなりますし、衰えてしまいます。そうすると、ちょっとした動きによって筋肉を痛めてしまいます。机の上でのパソコン仕事が続くと、下半身全体も衰え気味になるので、肥満体質になりやすくなります。結果、体重が身体の負担になるということも少なくありません。
また、いつもの仕事、いつもの作業を続けていることは疲れを溜めてしまい、腰の筋肉が硬くなって柔軟性がなくなってきます。そうなると腰痛になりやすく、かつ疲れやすくなります。
では、それを解消するにはどうするか? 座り方をちょっと変えるだけでも解消されます。それは「仙骨ではなくて、坐骨で座ること」たったこれだけです。仙骨というのは、おしりのくぼみの部分にある骨です。坐骨というのは、足の付け根とおしりの間にある骨のことを言います。
つまり、背もたれによりかかって、おしりの真ん中に座るのではなくて、骨盤を少し前に傾けて、足の付け根で座るようにします。たったこれだけで、意識しなくても自然と背筋が伸びて、あごを引いて、足をそろえて座るようになります。また、これだと背骨が曲がらないので、腰を傷めることもありません。
慣れるまでは大変かもしれませんが、続けることで腰痛も解消されるはずです。これを行う場合、椅子は低めのほうが机から離れなくてよいようです。椅子の高さを動かせる椅子でチャレンジしてみてください。
2-3.布団が合ってない
一日の4分の1を生活するのが布団の上です。ですが、間違った寝具や寝方によって、腰痛がより悪くなることがあります。最近では布団ではなく、ベッドの上で寝る人も増えてきていますし、布団も羽毛布団などの柔らかい布団で寝る人が増えています。
柔らかい布団やベッドは寝心地がよいこともあって、いいものだと思うかもしれませんが、腰痛には逆効果になる場合があります。なぜかというと、腰が沈みやすく反りやすくなるからです。腰が沈むと腰に余計な負担がかかってしまいます。とりわけ寝ている間は身体が無防備のため、ますます腰痛を悪化させてしまうのです。
せんべい布団は体が沈まないから腰に良い、ともいう方もあります。確かに寝返りも打ちやすく体の向きは変えやすいのですが、腰の周辺の筋肉がリラックスできず疲れがとれません。寝具によって体への負担もかわりますので、お使いの寝具を見直してみても良いかもしれません。
2-4.体重増加
「太りすぎると腰痛になりやすい」こんな話をあなたも聞いたことがあると思います。では、どうして太っていると腰が痛くなりやすくなるのでしょうか。実は、体重と腰痛の間には密接な関係があります。体重の増加に伴い腰に負担がかかるだけでなく、おなかが出るので自然と仰け反って立つため更に腰に負担がかかっています。そのため太っている人が痩せると、腰痛から開放されることが多いですし、逆に太りすぎてしまうと腰痛がひどくなることがほとんど、というのも納得がいきます。
もちろん、太ったことだけが腰痛の原因になるわけではありません。太ったことで身体を動かすのが億劫になってしまうため、筋肉が衰え、さらに腰痛が悪化する… そうした悪循環にはまるだけでなく、太ったことでその体重で腰に余計な負担がかかって、痛みが悪化してしまうということは容易に想像できるかと思います。逆に体を動かすことで筋の緊張がほぐれるだけでなく、血流も良くなりますから腰痛予防にも役立つといえます。
ちなみに、立ったり座ったり前かがみになったりという動作で腰にかかる負担は、体重の2.5倍にもなるそうです(※)。太りすぎでいる人は、普通の人に比べて、その体重差の2.5倍も腰に負担をかけていることになりますね。
太っていて腰痛がある人は、まずその体重を落とすことが大切といえます。そのためには運動が効果的です。運動といっても、ハードなものは逆に腰を悪くしてしまいますので、足腰への負担の少ないウォーキングから始めることをオススメします。
※Nachemson.A.L.(1975) The Lumbar Spine An Orthopaedic Challenge, Spine 1(1) 59-71 (リンク先は内容の要約)
2-5.ストレス
意外に思うかもしれませんが、ストレスが腰痛の原因となっている場合があります。最近の研究で「脳」と「腰痛」の関係が言われるようになりました。それは、原因不明の腰痛を抱えている患者の脳内血流量を調べたところ、なんとそのうち70%の患者が、腰痛のない健康な人に比べて、脳の血流量が低かったというのです(※)。その中でも特に脳の中の「側坐核」という部分の活動が低下しているであることもわかってきました。
この側坐核は「やる気」を出す脳内物質が分泌される部分として知られていますが、ここが痛みに対して即座に反応し、痛みを抑える司令を出すため必要以上に痛みを感じないように働いてくれているようです。しかしながら過剰なストレスを受けると、脳の動きが低下するため痛みが抑えられず、強い痛みとして感じてしまうのです。
では、この痛みを取る作用をする側坐核を活性化するには、どうすればよいのか。実はこの側坐核は「快楽」と強く関係がある場所なので、自分の好きな食べ物や音楽、においなどを積極的に取り入れることで、働きがよくなり、鎮痛作用が高まると言われています。
つまり、腰が痛いからといって家に閉じこもって痛みに耐えるのは逆効果ということです。むしろ、できる限り自分の好きなことをすることが、腰痛の治療になるということがわかってきました。ストレスをためてしまう生活をしていないか、自分で確認をしてみるようにしましょう。
※関口美穂,紺野慎一(2012) 脳内メカニズム 2012;63(8):717-721 (リンク先は内容の要約)
3.腰痛が起こった時の応急処置エクササイズ
3-1.スタティックバック
このエクササイズはエゴスキュー・メソッドという中の一つで、腰だけではなく、背中の痛みも解消するエクササイズ(Eサイズ)です。
1.足を乗せるための椅子か台を用意します。
2.そして仰向けになって、椅子か台の上に、両足を90度に曲がるように乗せます。
※90度の角度にならない場合は、椅子や台の上にタオルや座布団などを置いて足の高さを調節するようにして下さい。
3.ひざと足を股関節の幅に開きます。
4.両腕は手の平を上にして、体から45度離して伸ばします。
5.上半身をリラックスさせて、腰が左右平らになるようにします。
6.腹式呼吸を行いながら、この姿勢を保ちます。
7.この状態のまま、5分~20分、そのままでリラックスをします。
たったこれだけのエクササイズなのですが、腰痛が楽になってることに気づくはずです。痛みの状態を問わず、効果があります。ぜひ、ダマされたと思って、これだけやってみてください。
3-2.痛みがひどければペインクリニックに
ここまで述べてきたことで腰痛がよくなればよいのですが、面倒なのが慢性化してしまうことです。また、腰痛は心理的な要素も多く含まれます。そのため、痛みがなかなか治らないものについては、ペインクリニックを受診し、専門家の手助けを受けるのもひとつの方法といえるでしょう。
ペインクリニックでの治療法は多岐にわたっています。いわゆる神経ブロック注射、薬物治療、理学療法、心理療法、手術療法などを組み合わせて治療を行います。痛み止めを出されるだけではなく、脳や神経の記憶に刻まれた痛みに対応した治療を総合的に行います。
4.まとめ
いかがでしたか? 腰痛の痛みは長く続くといやなものですが、自分で改善できる要素も多くあります。健康や生活の質を大きく落とすものでなければ、医者にばかり頼ることなく、自分で解消していく選択肢を捨てないようにしましょう。
ぜひ、早いうちに対処して、毎日を元気に過ごして下さい。