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俳優野見隆明ぼう然「燃えないで」火元付近バー店長

日刊スポーツ 4月13日(水)10時1分配信

 昭和ロマンあふれる長屋店舗の連なる東京・歌舞伎町の繁華街「新宿ゴールデン街」で12日午後1時半ごろ、火災が発生した。警視庁四谷署や東京消防庁によると、バーが入った木造2階建てから出火し、隣接する建物に延焼。計3棟、延べ約300平方メートルを焼いた。

【写真】東京・歌舞伎町の火災現場で放水を行う消防隊員

 ゴールデン街の火災現場から60メートルほど離れた吉本興業東京本社に、ぼうぜんと立ちすくむ男がいた。11年にダウンタウン松本人志(52)が監督した映画「さや侍」に主演した俳優野見隆明(59)だ。燃えた建物の中に入る、バー「流民(リウミン)」で週に4日、雇われ店長を務めていた。日~火曜と金曜の出勤で、この日は勤務の前の出先で火災を知って駆けつけた。

 「もう、だめ。何も話せない」と、もうもうと煙が立ち上る光景が信じられない様子。「店の中には荷物も置いてある。身の回りの品とか、パスポートとか重要書類もある。放水でびしょぬれになっていてもいいから、燃えないでいてくれたら」と声を震わせた。

 野見は日本テレビ系トーク番組「松本紳助」を観覧していた時に松本の目に留まり、03年にフジテレビ系人間観察ドキュメント「働くおっさん人形」で芸能界デビュー。吉本興業で用務員をしたり、バーテンダーをしていたが、11年に「さや侍」主演に抜てきされた。12年3月には同作の演技が認められて「第35回日本アカデミー賞」の新人俳優賞に高良健吾(28)桜庭ななみ(23)らと共に選ばれている。

 俳優とは言っても、野見にとって生活の糧は「流民」での稼ぎが頼り。「こんなことになって、明日からどうしたらいいのか」とうつむいた。周囲からは「これをきっかけに、売り出せば」という励ましの声もあったが、還暦を来年に控えた野見にとっては、むなしく響くばかりだった。【小谷野俊哉】

最終更新:4月13日(水)11時10分

日刊スポーツ

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