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落語の居候はたいがい勘当された若旦那で…

 落語の居(い)候(そうろう)はたいがい勘当(かんどう)された若旦那(わかだんな)で、物の役に立たない。だが居候も食客と言い換えると、多彩な才能によって有力者に抱えられた古代中国の論客、政客、剣客などを思い出す。なかでも「食客三千人」といわれた孟(もう)嘗(しょう)君(くん)の話は有名だ▲「鶏鳴狗盗(けいめいくとう)」は斉(せい)の王族・孟嘗君が秦(しん)を逃れて命拾いするのに、同行の食客の才が役立った故事に由来する。才といっても犬のように素早い盗みと鶏の鳴きまねだった。鶏鳴狗盗はつまらぬ才のたとえとされたり、いざという時に思わぬ芸が役立つのを表したりする▲人は体の内にも多くの居候、あるいは食客のような微生物を抱え、それらと共生している。大腸内にすむ腸内細菌がその代表で、種類は約1000、数にすれば数百兆個というから孟嘗君もびっくりだ。それら腸内の食客が健康に及ぼす影響をめぐる最新研究である▲それによると日本人にはコメなど炭水化物から無駄なく栄養素を作る腸内細菌が外国人に比べ際立って多かった。また外国人に少ない海藻(かいそう)を消化する細菌が大半の日本人に見られた。早稲田大の研究チームが日本人と外国人の腸内細菌の遺伝子を比較した結果である▲日本人の腸内細菌にはDNAの修復にかかわる遺伝子が少なかったという。人間のがんにもつながるDNAの損傷の起きにくい腸内環境がうかがえる。研究者は腸内細菌の特徴が日本人の長寿とも関係している可能性があるというから、恐るべきは食客の才腕である▲日本人の腸内細菌の顔ぶれがフランスなどと近いのも意外だった。それら食客をそろえて寿命を延ばした知恵者に話を聞きたい腸内の鶏鳴狗盗である。

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