米国株は今日から2016年第1四半期の決算発表シーズンに突入します。

ところで話が脱線するけれど、およそ決算発表に関する記事ほど、マスコミ各社の実力の差が露見するトピックもありません。

記事を読んだ読者が(そうか、良い決算だったのか)という印象を受けたにもかかわらず、その後、株価が下がる……逆に(えっ? 酷かったの!)と思ったのにその後で株価が騰がる……これらはいずれも記事を書く記者がツボを押さえてないから起こる現象です

それではそのツボとは一体、何だ? といえば、決算の良し悪しを判断する際は、必ず直前のコンセンサス予想との対比に於いて、それを上回ったのか? それとも下回ったのか? を論じるべしということです。

仮に前年比で利益が+100%伸びていたとしても、市場参加者が+105%を期待していたのであれば、それは決算の「とりこぼし」に他なりません。つまり、落胆すべき決算ということです。

なぜコンセンサスだけが問題になるのでしょうか?

それは株価には先見性があり、将来、起こるであろうことを絶え間なく、刻々と、株価に織り込んでゆくからです。

言い直せば、現在の株価は、いまのコンセンサスをきっちり織り込んだ水準になっているということです。

それでは具体的にどのコンセンサスを見るか? ですが:

1.EPSが市場予想を上回ったか?
2.売上高が市場予想を上回ったか?
3.来期以降の会社側ガイダンス(=会社側見通し)が市場予想を上回ったか?


がポイントになります。

この3項目のうち、ひとつでもコンセンサスを下回ったら、もうそれは良い決算とは言えません。普通、6割程度の企業しかコンセンサスを上回らないのだから、来る決算、来る決算、コンスタントに予想を上回る(しかもEPS、売上高、ガイダンスの3項目すべてで!)ということが、いかに無理ゲーか、わかると思います。

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なおEPSの数字は、いわゆるオペレーティング・ナンバー、つまり一時要因を除いた営業ベースの数字を使うのが常識です。

しかしリポーテッド・ナンバー、つまり米国で一般的に受け入れられている会計基準(U.S.GAAP)に従ったEPSを報じるメディアが後を絶ちません。これは記者が犯しやすいチョンボです。

なぜならU.S.GAAPの数字はアナリストたちが予想を立てる上で事前に知り得ない特別益などの一時要因を含む数字であり、そもそもコンセンサスと同等な基準(これをapples-to-applesと言います)で比較できないからです。

そういう事をきちんとわきまえず記事にするから、記事が「良い決算」と書いた後で株価が下がったりするわけです。

もっと酷い記事になると決算後の株価の言及(例:「引け後の気配で○%下がっている…」)すら無い新聞もあります。

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