宮島祐美
2016年4月11日18時10分
激しい雨が降る中でのレースだった。2009年に「最多勝利騎手」に輝いた中央競馬の内田博幸さん(45)は11年5月11日、東京・大井競馬場の夜間競馬「トゥインクルレース」の途中で、落馬した。
全長1200メートルの砂のコースは、大井競馬に所属していた地方競馬時代から知り尽くしている。
「きょうは雨が強いから、滑りやすいな」
雨が降るコースは、砂が流されてスピードが出やすい半面、滑りやすくもなる。気持ちを引き締めて、臨んだレースだった。
ゴール前の最後の直線。乗っていた馬は、後方につけていた。
「よし、ここからだ」
追い込みをかけるため、馬にむちを入れた。その瞬間、わずかに馬とのバランスがずれ、重心が合わなくなった。
「あっ!」
体が右に傾く。右足で踏ん張ろうとしたが、輪に足をかけて体を支える「あぶみ」が外れていた。
「ドーン」
体に激しい衝撃が走った。足から落ちた後、頭が地面にたたきつけられた。コース上で倒れたまま、自分の体に呼びかけた。
「意識は、はっきりしているな。手足の骨折も、なさそうだ。ただ、首がまずいな……」
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