大鹿靖明
2016年4月12日02時12分
テレビ朝日とサイバーエージェントが設立したインターネット放送局アベマTV(ティーヴィー)が11日、開局した。動画配信サービスの台頭や若者のテレビ離れに危機感を抱いたテレ朝が、IT大手のサイバーに主導権をゆだねて合弁会社を設立。他の動画配信サービスと異なり、テレビではなくスマートフォン主体で、しかも無料で見られる新機軸を打ち出した。
米国から上陸した動画配信サービスのネットフリックスやフールーは有料だが、アベマTVは原則無料。いまの放送と同じく番組中にCMが流れる。パソコンでも見られるが、基本はアプリをダウンロードしてスマホで見る。
スマホユーザーの若者を視聴者に想定。みのもんたさんが司会を務める看板のニュース番組は、テレビを見ない若者をつかまえようと、あえて若者目線の作りにする。釣りやマージャン、ペットなどネットならではのニッチな番組を用意し、全24チャンネルでスタートした。
アベマTVはサイバーが60%、テレ朝が40%出資し、サイバーが主導する。サイバーが展開するインターネットサービスの名称「アメーバ」を、アルファベット表記にして逆から読んでアベマと名付けた。
ライブドアや楽天に株を買い占められたことがある放送界にはIT企業への警戒感があり、サイバーの藤田晋社長も代表的な「ヒルズ族」だ。だがヒルズ族騒動から10年たち、放送界を取り巻く環境は激変。動画配信サービスが乱立する半面、民放主導のものは規模や操作性で後れをとった。加えて若者のテレビ離れが加速。テレ朝の早河洋会長は「既存の放送局がネット事業を仕切るのは無理。彼らが主導し、我々がサポートするのが理想」と、藤田氏に主導権を渡した。いきなり株を買い占めるのではなく、早河氏の社長就任後7年間にわたって個人的な信頼関係を築いてきた藤田氏の姿勢も奏功した。
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