原発運転か停止か 分かれる司法判断
鹿児島県にある川内原子力発電所1号機と2号機の運転停止を求めている住民の仮処分の申し立てについて、福岡高等裁判所宮崎支部は「原子力規制委員会の安全性の判断が不合理とは言えない」として、退ける決定を出しました。原子力発電所を運転させないよう求める裁判所への申し立ては、5年前の原発事故をきっかけに全国で相次いでいて、裁判所の判断は分かれています。
原子力発電所を巡る裁判は昭和40年代後半から起こされていますが、5年前に福島第一原発の事故が起きると、改めて安全性を問う動きが広がりました。
住民などのグループの弁護団によりますと、全国の裁判所に申し立てられた仮処分や集団訴訟は現在、およそ30件に上っているということです。
このうち、福井地方裁判所では去年、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない決定が出たのに対して、別の裁判長が関西電力の異議を認めて、この決定を取り消しました。
一方、同じ高浜原発3号機と4号機について、大津地方裁判所は先月、運転の停止を命じる仮処分の決定を出し、関西電力が異議を申し立てています。
川内原発1号機と2号機については、去年、鹿児島地方裁判所が住民の申し立てを退け、6日の決定で福岡高等裁判所宮崎支部も申し立てを認めませんでした。
今後も各地で原発の再稼働に向けた手続きが進むなか、運転させないよう求める申し立ても増えるとみられ、司法の判断が注目されます。
住民などのグループの弁護団によりますと、全国の裁判所に申し立てられた仮処分や集団訴訟は現在、およそ30件に上っているということです。
このうち、福井地方裁判所では去年、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない決定が出たのに対して、別の裁判長が関西電力の異議を認めて、この決定を取り消しました。
一方、同じ高浜原発3号機と4号機について、大津地方裁判所は先月、運転の停止を命じる仮処分の決定を出し、関西電力が異議を申し立てています。
川内原発1号機と2号機については、去年、鹿児島地方裁判所が住民の申し立てを退け、6日の決定で福岡高等裁判所宮崎支部も申し立てを認めませんでした。
今後も各地で原発の再稼働に向けた手続きが進むなか、運転させないよう求める申し立ても増えるとみられ、司法の判断が注目されます。
大津地裁の決定との違いは
6日の決定と、高浜原発の運転停止を命じた先月の大津地方裁判所の決定は、電力会社が説明を尽くしたかどうかという点で、判断が大きく異なりました。
2つの決定では、電力会社が原発の安全性について根拠や資料を明らかにしたうえで立証や説明を尽くすべきだという考え方が示されました。通常の裁判では申し立てをした側が自分たちの主張が正しいことを立証しなければなりませんが、2つの決定は、申し立てを受けた側の電力会社に立証や説明を求めた点が共通しています。
一方で、電力会社がその責任を果たしたかどうかという点で判断が大きく異なりました。重要な争点となった地震に対する安全性について、大津地方裁判所は「高浜原発の周辺で関西電力が行った断層の調査は、海底を含む周辺領域すべてで徹底的に行われたわけではなく、断層が連動して動く可能性を否定できない」などとして、説明が不十分だと指摘しました。
一方、6日の決定で、福岡高等裁判所宮崎支部は、九州電力が行った断層の調査について「徹底した調査の結果、敷地周辺で確認された断層は長期間活動がないと判断され、将来活動する可能性のある断層の存在は否定されている」などとして、説明を尽くしたという判断を示しました。
また、そのほかの争点についても、電力会社が立証や説明を尽くしたかどうかについて判断が分かれ、結論が大きく異なる結果となりました。
6日の決定と先月の大津地方裁判所の決定の違いについて、専門家は、自然災害のリスクについての考え方が大きく異なっていると指摘しています。
元裁判官で、原子力関連施設の裁判を担当した経験がある中島肇弁護士は、「大津地裁は、原発を運転するには災害のリスクを限りなくゼロに近づけなければいけないと判断したようだが、福岡高裁宮崎支部は、災害のリスクをゼロにするのは現在の科学技術では不可能だと指摘した」と述べ、この考え方の違いが判断の分かれ目になったと指摘しました。
そして、今後の原発を巡る裁判や仮処分への影響については、「福岡高裁宮崎支部の考え方は、震災の前から続く伝統的な司法の考え方に近く、ほかの裁判でも参考にされるだろう。しかし、福島原発の事故はこれまで想定されていなかったので、こうした伝統的な判断が通用するかどうかが、今後問われることになる」と話していました。
2つの決定では、電力会社が原発の安全性について根拠や資料を明らかにしたうえで立証や説明を尽くすべきだという考え方が示されました。通常の裁判では申し立てをした側が自分たちの主張が正しいことを立証しなければなりませんが、2つの決定は、申し立てを受けた側の電力会社に立証や説明を求めた点が共通しています。
一方で、電力会社がその責任を果たしたかどうかという点で判断が大きく異なりました。重要な争点となった地震に対する安全性について、大津地方裁判所は「高浜原発の周辺で関西電力が行った断層の調査は、海底を含む周辺領域すべてで徹底的に行われたわけではなく、断層が連動して動く可能性を否定できない」などとして、説明が不十分だと指摘しました。
一方、6日の決定で、福岡高等裁判所宮崎支部は、九州電力が行った断層の調査について「徹底した調査の結果、敷地周辺で確認された断層は長期間活動がないと判断され、将来活動する可能性のある断層の存在は否定されている」などとして、説明を尽くしたという判断を示しました。
また、そのほかの争点についても、電力会社が立証や説明を尽くしたかどうかについて判断が分かれ、結論が大きく異なる結果となりました。
6日の決定と先月の大津地方裁判所の決定の違いについて、専門家は、自然災害のリスクについての考え方が大きく異なっていると指摘しています。
元裁判官で、原子力関連施設の裁判を担当した経験がある中島肇弁護士は、「大津地裁は、原発を運転するには災害のリスクを限りなくゼロに近づけなければいけないと判断したようだが、福岡高裁宮崎支部は、災害のリスクをゼロにするのは現在の科学技術では不可能だと指摘した」と述べ、この考え方の違いが判断の分かれ目になったと指摘しました。
そして、今後の原発を巡る裁判や仮処分への影響については、「福岡高裁宮崎支部の考え方は、震災の前から続く伝統的な司法の考え方に近く、ほかの裁判でも参考にされるだろう。しかし、福島原発の事故はこれまで想定されていなかったので、こうした伝統的な判断が通用するかどうかが、今後問われることになる」と話していました。
「社会全体で議論必要」
原子力発電所の運転を巡り司法判断が分かれていることについて、科学史が専門の千葉大学の神里達博教授は、「福島第一原発の事故がもたらした被害や教訓を重視するのか、それとも川内原発の安全対策に限って判断を下すのかで、おのずと結論は変わってくるように、司法の一連の判断を見ると、裁判官の問題の捉え方に大きく左右され、純粋な科学的な議論だけで結論を出すのは難しい。全体的には司法も迷っているように見える」という見方を示しました。
そのうえで「原発の再稼働は、私たちがどのような社会を実現したいかに関わるもので、裁判所や専門家だけに議論を丸投げしていい問題ではなく、今も続く福島第一原発事故の大きな影響を見ても、議会や行政、市民など社会全体でより真剣に議論しなくてはならない問題になっている」と述べています。
そのうえで「原発の再稼働は、私たちがどのような社会を実現したいかに関わるもので、裁判所や専門家だけに議論を丸投げしていい問題ではなく、今も続く福島第一原発事故の大きな影響を見ても、議会や行政、市民など社会全体でより真剣に議論しなくてはならない問題になっている」と述べています。