マーケティング事例

なぜ、データの分析結果が施策につながらないのか?:データ活用、成功企業が実践するマネジメント

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データをうまく活用すれば、ビジネスに多大な成果が得られると理解していても、実際のプロジェクトになるとうまくいかずに頓挫することが多い。それはなぜだろうか。今回は、2016年2月上旬に行われた「2つのDMPを活用したマーケティング施策大公開セミナー」の講演内容をもとに、株式会社ブレインパッド アナリティクスサービス本部の筧直之氏とマーケティングプラットフォーム本部の柴田剛氏にデータ分析プロジェクトを進める上ではまりがちな“ワナ”と、その対処法を聞いた。

通販会社A社がデータ分析に成功した理由

ITアドバイザリ企業のガートナーが2014年に行った調査結果によると、国内企業で「ビッグデータを一部活用しはじめている」という企業は、調査対象の6%だったという(下図参照)。ウェブのトレンド調査によると「ビッグデータ」という言葉が登場しはじめたのは2011年、「データサイエンティスト」という言葉が注目されはじめたのは2013年で、そうした世間の流行に比べると、実際の活用にまでつながったケースは、きわめて少ないといえる。


ガートナープレスリリース「ガートナー、ビッグ・データに関する調査結果を発表 ビッグ・データを実際に活用している日本企業は6%という結果に取り組みが進まない主な阻害要因について、48%の企業が『ビッグ・データから価値を得る方法がわからない』と回答」2015年5月25日(外部サイト)

その理由について、データ分析事業を展開するブレインパッドは「普通にデータ分析プロジェクトを進めると、必ずつまずくポイントがある。ワナにはまって、プロジェクトが頓挫するケースが多いんです」(柴田氏)と語る。

ところが、そんな同社が支援したある通販会社では、データ分析の結果に基づき実施した割引クーポンを使ったキャンペーンマーケティングで、購入単価15%増という結果を見せた。

そのプロジェクトの成功ポイントは、「分析」と「マーケティング施策」の両方を担当する責任者が全体を統括したこと。これにより、データ分析プロジェクトで陥りがちな“ワナ”にはまらずに済んだという。

マーケティング施策担当者がデータ分析に対して抱く不満とは

<データ分析>のワナ、陥りやすい失敗とは何か。いろいろあるが、ブレインパッドによると、ワナにはまるタイミングは大きく2つだという。プロジェクトの「途中」か「最後」だ。途中の場合、ほとんどは「分析結果が施策につながらない!」というもので、最後の場合は「こんな結果、意味がない!」というものだ。

なぜこうしたことが起こるのか。それは、データ分析担当者・マーケティング施策担当者の両方の意思疎通がおろそかになっていることが原因だ。

一般にマーケティング施策を行う際、現状の課題に対して原因を分析し、その結果に基づき効果的な施策を立案・実行し、その結果を受けて改善を行う。そのため、対象となるマーケティングデータの分析に施策担当者が積極的に関与しなければ、施策に必要な結果も得られない。

筧、柴田両氏の経験によると、「分析結果が施策につながらない!」という時には、大きく3つの原因が考えられるという。

分析結果が施策につながらない理由は、セグメント数が多すぎる、セグメントが現実的ではない、分析結果が施策に落ちないの3つ。""

ブレインパッド社の資料を元に、編集部作成

施策担当者からすると、与えられるのはデータだけ。

分析したおおよその属性データやセグメントがわからなければ、特定条件もわからない。そのため、居住地や年代で細かく区切った膨大な数のセグメントが出てくるし、たとえば若年層がターゲットとなるサービスが分析対象で、40歳以上の顧客はほとんどいないにもかかわらず「年齢40歳以上」のセグメントを分析対象としていたりする。あるいは、数値結果だけを渡し「あとはそちらでどうぞ」と解説をしようとしないケースもある。そのため、結果として「分析結果が施策に落ちない」事態に陥り、「こんな結果、意味がない!」となってしまうのだ。

結果は施策実施「前」から見えている? 施策担当者とのコミュニケーション法

しかし、分析担当者側にも言い分はある。最もよくあるケースが、「成果が出たのに責められる」というものだ。これが、データ分析プロジェクトの最後に陥るワナでもある。

たとえば「優良顧客を育成するため、クロスセル施策を実施して成果が見られた」というケースであるにもかかわらず、「キャンペーンで利用したLP(ランディングページ)のCTR(クリック率)が悪いじゃないか」など、別の指標を持ち出して「成果が出ていない!」と、施策担当者から詰め寄られる。

原因はほとんどの場合、施策を実施する「前」に成果基準と目標値を明確にし、共有していないためだ。これは後出しじゃんけんをしているようなもので、こんな状況に陥ってしまうと分析担当者はどんな結果を出しても求められる成果に応じられるはずがない。

冒頭に紹介した通販A社の場合、分析・施策の両方を担当し、中立的な立場で全体をまとめるプロジェクトマネージャーがいたため、こうしたひっかかりやすいワナに足を取られずに済んだといえる。

とはいえ、「いや、うちの会社は事前に成果基準を決めている」「プロジェクトの統括責任者を据えている」というケースもあるだろう。それなのに、データ分析プロジェクトが頓挫するのはなぜか。後編「なぜ企業のデータ活用は失敗してしまうのか?:『そもそも論』『どんでん返し』に負けないプロジェクトマネジメントのコツ」ではその理由と対処策を見ていこう。

プロフィール

株式会社ブレインパッド アナリティクスサービス本部 営業部長/アカウントマネージャー 筧 直之氏

2004年伊藤忠テクノソリューションズに入社。航空会社向けのクラウドビジネス開発や、新規プロダクトの立ち上げ・拡販、ソリューションの企画・推進等に携わる。2011年ブレインパッドに入社。 入社後は、一貫してアナリティクスサービスの提案に従事。クライアント企業に対し、社内外のデータを組み合わせた分析・モデリング・最適化を通じて、企業の業務課題解決とデータ活用推進のためのコンサルティングを提供。2014年より現職。CRM/SCM/営業支援/業務効率化領域など多数の案件を担当。

株式会社ブレインパッド マーケティングプラットフォーム本部 営業部長代理/シニアコンサルタント 柴田 剛氏

営業職を経験後、Webマーケティング支援会社にてWebマーケティング全般のコンサルティング(企画立案・提案・運用まで)を経験。2012年ブレインパッドに入社。最適化エンジンを活用したプロダクトのマネジメントおよびコンサルティング業務に従事。 その後、大手通信会社や大規模ECサイトなどのデータ活用プロジェクトのプロジェクトマネージャー/コンサルティング業務などを多数手掛ける。2016年より現職。

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