予算前倒し指示 事業費執行、上半期8割
安倍晋三首相は5日の閣議で、2016年度予算の前倒し執行について各担当閣僚に指示した。16年度予算などに盛り込んだ事業費12兆1000億円の執行を前倒しし、9月末までに8割程度を契約することを目指す。前倒し執行による需要創出によって景気を下支えする狙いだ。
首相は閣議で「16年度予算の年度内成立の実を上げるため、15年度補正予算と合わせて16年度予算をできる限り上半期に前倒しして実施し、早期に効果を発揮させていく」と述べ、協力を要請した。「日本経済の回復傾向に変わりはないが、世界経済の不透明感が高まっているのは事実だ」とも指摘した。
前倒しする12兆1000億円の内訳は、一般会計に計上した道路や港湾、治水、農業農村整備など公共事業と、学校などの施設整備事業が計7兆7000億円。特別会計に計上した東日本大震災からの復興事業や空港整備事業などが計2兆2000億円。高速道路会社や都市再生機構(UR)の実施する整備事業など計2兆2000億円も対象とする。麻生太郎財務相は閣議後の記者会見で「対象事業以外の経費も、可能なものは早期に実施したい」と述べた。
地方自治体に対しても事業の早期執行を進めるよう、対応を求める。高市早苗総務相は「地方公共団体においても、予算の早期実施に積極的に取り組んでもらうことが重要だ」と述べ、各省庁に対し、補助金の早期交付などを求めた。総務省は5日、事業の早期執行を積極的に行うよう地方公共団体に通知した。
予算の前倒し執行を巡っては、首相が16年度予算の成立を受けた先月29日の記者会見で「予算の早期成立は最大の経済対策で、実を上げるには早期執行が必要だ。可能なものから前倒しするよう麻生財務相に指示する」と表明していた。
首相は、5月下旬の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)を踏まえ、財政出動を含む追加の経済対策の実施を最終決定する方針だ。また、予算執行の前倒しによって16年度下半期の支出が減るため、政府は補正予算を編成して支出を補うことも検討する。【高本耕太】