特許審査に活用へ 16年度から実証事業
特許庁は2016年度から、特許の出願手続きや審査で人工知能(AI)を活用するための実証事業を始める。どういった作業でAIが使えるかを検証し、将来的にはAIによって審査の効率化につなげる考えだ。29日に成立した16年度予算に7000万円を盛り込んだ。
年間約30万件の特許出願手続きは大半がインターネットで行われているが、約6000件は書面で窓口に提出されている。また、書類に不備がないかどうかの確認など細かい手続きには人手が必要だ。審査官は約1700人いるものの、膨大な文献にあたって過去に同じ発明がないかどうかを調べるなど労力がかかる作業が多く、業務量は増加傾向にあるという。
実証事業では、出願手続きでの不備の発見のほか、出願された発明の内容を理解したうえで審査に必要になりそうな文献を集める作業などにAIを活用する。新興国経済の成長によって、中国や韓国など英語圏以外での出願が増えて審査で使う文献の言語も多様化していることから、AIを使った精度の高い翻訳なども検討する。
特許庁は「AIが活用できれば過去の発明の検索などの時間が短縮でき、特許として認められるかどうかの判断など人間にしかできない仕事に労力を割くことができる」としている。特許の審査などでAIを活用する動きは米国や豪州でも進んでおり、特許庁は各国当局とも情報を共有して実証事業を進める考えだ。【横山三加子】