ぼくが、今年一番衝撃を受けた本が、一橋大学の楠木教授が著した「好きなようにしてください」です。
何回も読み返したり、この本から着想を得たブログ記事もたくさん書いてきました。 今まで「なんかおかしくねーか」と思っていたことを、ユーモアと深い見識を持ってズバズバ切っていくさまは、痛快以外の何物でもないです。
びっくりするぐらい面白いんだコレが。
どんな本なの?
Newspicksでの連載が元になっているモノで、読者からの雑多な質問に対して、楠木教授が回答していくという体裁の本です。50の質問があり、そのすべてに楠木教授が答えています。
もうこれが面白すぎる。Interestingだけじゃなく、Funnyな要素もあって、そこらへんの漫才より数段笑えます。電車でたまに声を出しかけたことがあるレベル。
また、題材にもなっている「好きなようにしてください」という彼の本質的な考えが、全体を貫いています。「好きなことで、生きていく」などのコメントと一見似ていますが、思考の深さや納得感が段違いで、もはや比べるにも値しません。
選定されている質問も秀逸で、「あー、こういう悩み持ってる人たくさんいるわ」「そうそう、おれもこれと一緒の悩みだ!」というかんじ。
就職活動、キャリア選択、結婚生活、企業経営、留学、子どもの教育、上司との人間関係、そういうことがメインです。つまり、人生でみんなが悩みそうなポイントはほぼカバーされてますね。
具体的にはどんなかんじ?
ちょっと抜粋してみます。大学生が質問者ですね。
都内の大学に通う22歳です。ずばり先生にお聞きしたいのは、経営者になるためには、どのようなキャリアパスを歩むのが一番、成功の確率が高いか、です。
これまで、井深大、本田宗一郎といった日本の起業家や、ジョブズ、ザッカ―バーグ、ベゾスといった世界の起業家の本を読みあさり、彼らのような経営者になりたいと強く思うようになりました。まだいまは、「特にこれをしたい」という事業領域はないのですが、とにかく経営者になりたいと思っています。
経営者に至る道はさまざまだと思いますし、そもそも才能がないとダメだとは思います。そして、私に才能があるかはわかりません。私のように、経営者になりたいけれど、何をしたいかまだ固まっていない人間は、どんな企業や分野から、ビジネスマンとしての修行を始めるのがいいでしょうか?
コレに対し、楠木教授がズバッと秀逸な回答を返します。
愚問をいただき、ありがとうございます。しばらくは好きなようにしていてください。そのうちにこういうヘンなことを考えなくなるのでご安心ください。
こういう質問をお受けすると、人間の性を痛感します。人間というのは、実に虫がいい考え方をするものです。とにかく手っ取り早く、最小のコストで成功する「法則」や「方程式」を求める。若い人ほどそういう傾向が強いように思います。あなたに限らず、若いうちは多くの人がこうした安直な解を求めるものです。
ハゲ頭の説教として聞いていただきたいのですが、率直に言ってあなたは「怠け者」です。当然の話ですが、仕事の中身が経営者であるかどうかにかかわらず、「最適なキャリアパス」など世の中には金輪際存在しません。ましてや経営者という仕事はそんな事前に「成功の確率」をはじき出せるようなものではありません。
(以下略)
いやーシビれますね。「愚問をいただきありがとうございます」「ハゲ頭の説教として・・・」などなど、唐突に挟まれるユーモアが大好きです。
即本質に切り込みつつ、明快なロジックで読者の悩みまで一緒に解決する、すばらしい回答がモリモリしている本です。これが1000円ちょいで本当にいいんですか?という気持ちになりました。
どういう影響があった?
ぼくは、そもそも楠木教授と非常に近い価値観があったので、ハチャメチャに響いたということがあるような気がします。とはいえ、それを差し引いても全人類に自信を持ってオススメできます。
ぼくはコレを読んでから自分の価値観を明快に言語化できるようになり、仕事もだいぶうまくいくようになってきました。また、他の人の相談に乗るときの軸として、「その人が好きなようにできそうかどうか」というところにフォーカスできるため、非常に納得感のある回答を出せるようになりました。
とにかく、何かに悩んでる人は即購入してみてください。超面白いですよ。