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 大規模な汚職に関与した疑いが浮上しているブラジルのルラ前大統領について同国の連邦最高裁は18日、「捜査逃れが目的だ」として官房長官への就任を差し止める決定を出した。決定は最高裁判事1人の判断によるもので、政府は最高裁大法廷に抗告する方針だ。

 地元報道によると、決定を出したのは最高裁のジウマル・メンデス判事で、ルラ氏の入閣を「憲法違反」と判断した。ルラ氏は、国営石油会社と与党政治家らが絡む汚職事件に関わったとして捜査の対象となっている。同国では閣僚の捜査や起訴には最高裁の承認が必要とされるため、メンデス判事は「入閣により捜査の追及を逃れようとした兆候がある」と指摘した。

 メンデス氏は今後のルラ氏に対する捜査について、最高裁ではなく、これまでの管轄裁判所の承認で継続できるとの判断も示した。

 ルラ氏は17日にルセフ政権の官房長官に就任。ルセフ大統領は「政府の強化のため」と説明したが、野党側が「捜査逃れだ」として最高裁に差し止めを求めていた。大統領府は朝日新聞の取材に「司法の最終判断が出るまでルラ氏は官房長官としての権力行使はできない」としている。

 一方、連邦下院議会では18日、不正会計に関与したとされるルセフ大統領への弾劾(だんがい)請求の是非を巡り、1回目の審議が行われた。クニャ下院議長は「審議は連日行う」と述べ、手続きを加速させる考えを示した。(サンパウロ=田村剛)