日銀は15日、金融政策決定会合を開き、金融緩和策の現状維持を決めた。1月29日に導入を決めたマイナス金利に金融機関は不満を持ち、市場の変動も大きかった。影響をもう少し見定める必要もあったため、追加緩和を見送ったのだろう。
現在、日銀は年間80兆円のペースで新規資金を供給する量的緩和と、日銀当座預金の一部の利率をマイナス0・1%にするマイナス金利政策を併用している。これは、予想インフレ率を高め、実質金利(名目金利から予想インフレ率を差し引いたもの)を引き下げ、経済を活性化するためである。
予想インフレ率は、物価連動債から計算できるブレーク・イーブン・インフレ率、アンケートからのデータ、物価動向からの推計などいろいろな指標を総合的に見る必要があるが、最近の動きはあまり望ましくない。
予想インフレ率の動きは、日銀のマネタリーベース(供給する通貨)の動向でおおよその方向が決まるが、GDPギャップ(潜在的な国内総生産と現実との差)にも左右される。2014年4月の消費増税以降、GDPギャップが拡大しているので、マネタリーベース増加による効果が打ち消されている。このため、予想インフレ率は上昇せず、むしろ若干低下傾向になっているのだ。
こうした状況で金融政策に何ができるのか。予想インフレ率を高くするには、消費増税の悪影響を除去する必要がある。理論上は消費減税を行えばいいが、政治的にも無理な話だろう。代替措置として、所得税減税や財政支出が考えられる。しかし、いずれも財政政策に属するもので、日銀の影響が及ぶ範囲ではない。