日本でも多く報道されている通り、中国都市部は今深刻な大気汚染に直面しています。
下の画像は中国人の友人が東京、ソウル、北京に同時期に訪問した際、飛行機から撮影した夜景なのですが、北京だけ大気汚染で街の明かりが全く見えません。
また、下記画像は日本人の友人が北京で別時期に撮影したものですが、汚染が深刻な時はPM2.5指数が500を突破し、ビルが霞んで見えなくなります。
なお、少し古いですが2013年は東京ではPM2.5指数が70を超えたことはないそうです(参考)。
下の画像は携帯アプリのPM2.5計測上限の500を振りきっています。
大気汚染の原因
中国の大気汚染には様々な要因が考えられますが、よく耳にするのは下記の2点です。
- 燃料効率の悪い安価な石炭燃料に依存していること
- 経済発展と共に都市部で自動車が爆発的に普及し、排気ガス量が急増したこと
詳細は元CCTV(中国版NHK)キャスターの柴静氏が私費制作し、中国国内で非常に話題となった告発動画でも確認できます。
他にも、中国独自の風習で一時的にPM2.5指数が急上昇することがあります。
下図は2015年(左)、2016年(右)の中国旧正月(春節)のPM2.5指数です。旧正月には街の各所で爆竹や花火を楽しむ風習があり、それが始まる夕方頃からPM2.5指数が急上昇しています。
最近では環境にいいエコ花火が人気なんだとか・・・。
大気汚染の解消策
大気汚染対策は経済とのトレードオフとなる面が大きく、すぐに解決できるものではありませんが、現状の大気汚染解消策としては下記の方法があります。
神風を祈る
北京在住者からすると、短期的な大気汚染解消には風が一番の味方です。全く根本解決にはなっていませんが、風が吹くと驚くほどPM2.5指数が急降下します。(拡散して他の地域が汚染されているとも言えますが…)
政府規制で発生源を絶つ
中国政府の対策の一つとして現在、都市部の工場の地方移転が進んでいます(北京の場合は河北省へ移動)。また、中国政府の重要イベント時には車両交通制限や工場強制停止の規制をかけて、PM2.5の発生源を減らす政策を打ち出すことがあります。
2014年に北京でのAPEC開催時は青空を死守するために、開催前の1週間は政府機関や学校を特別休日にし、車両制限や工場停止をするという徹底振りでした。
おかげでAPEC期間中は見事に青空が広がり、APEC Blueという言葉が流行しました(下記画像)。
ただし、APECが終わるとすぐに大気汚染が再発したため(下記画像)、「APEC Blue」は今では、その場しのぎの持続的ではない解決方法として揶揄されています。
他にも、2015年夏には、北京での「世界陸上」や「9・3抗日戦争勝利記念日」の際に、APEC時と同様の車両交通・工場規制がかけられました。また、2015年冬には、北京で初の「赤色警報」が発せられ、車両規制や学校休暇の措置が取られています。
技術改善で発生量を減らす
中国政府は持続可能な根本対策として、技術改善も進めています。石炭の燃料効率向上(石炭洗浄など)、代替エネルギーの開発、車両への排気フィルター設置、電気自動車の導入などなど。ただし、この辺の技術対策はもう少し時間がかかりそうな感じです。
(おまけ)季節と地理的な違い
大気汚染には季節性と地理性があります。
季節性
まず、冬は夏に比べて大気汚染がひどくなります。それは冬になると石炭を使った暖房の使用増加が原因のようです。また、冬でも旧正月中は都市部で働く多くの人が帰省するため、エネルギー使用量が減り、大都市の大気汚染が緩和する傾向があります。
地理性
基本的には南部より北部のほうが大気汚染が深刻な傾向があります。ただし、個人的には南部のほうが慢性的に大気汚染が発生している印象があります。
下の画像は2015年末前後1ヶ月間の北京(北部)と上海(南部)のPM2.5指数です。
北部の北京は1日の平均PM2.5指数が500に達することがある一方で、50を下回ることもあります。一方で南部の上海は300以上の極端な日はありませんが、100以下になることもめったにありません。(たまたまでしょうか?)
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