漏電、検知しにくい珍しいタイプか 被害拡大
埼玉県熊谷市のJR高崎線・籠原(かごはら)駅で起きた漏電火災で、漏電を検知して電気の流れを止める安全装置が漏電を認識できず、しばらく電気が漏れ続けたために付近の電気設備の焼損につながり、被害が拡大したことがJR東日本の調査で分かった。検知しにくい珍しいタイプの漏電が起きた可能性があり、JR東は鉄道総合技術研究所と連携して詳しい原因を調べている。
JR東によると、一般的には漏電で架線に通常と異なる量の電気が流れると、変電所にある安全装置の遮断器が察知し、自動的に短時間で停電させる。漏電が続くと他の電気設備にも被害が及ぶためだ。
一方、現場のような多数の電車が短い間隔で運行される区間では、電車の本数やモーターの作動状況によって架線に流れる電気の量に差が生じるため、遮断器が正常と判断する電気の量にも一定の幅を持たせて停電が頻発しないようにしている。籠原駅の現場もそうした場所だった。
今回の漏電の直接のきっかけは、架線をつるす鉄製のはりにある絶縁体の「がいし」が劣化して壊れ、送電線がはりに接触したこと。通常、送電線の電気は架線とパンタグラフを通し電車に入り、線路に流れるが、漏れた電気ははりと電柱を通って地中に流れた。
ところが電柱がコンクリート製で電気抵抗が高く、漏電量が一気に増えなかったために遮断器が漏電を検知できなかったらしい。
電柱経由で地中に漏れた電気が近くの信号、ポイント、踏切関係の電気設備に流れ、過電流となって設備を焼損し、復旧作業を手間取らせることになった。籠原駅は電車を留め置く線路が多数あり、信号関係の設備が多かったことも被害を大きくしたという。【本多健】
技術革新に期待したい
JR東日本出身で交通コンサルタント会社「ライトレール」の阿部等社長の話 今回のタイプの漏電の検知技術はコストがかかるため、低コスト化が長年の課題だった。送電線につけられているがいしはJR東日本の首都圏だけで8万カ所もあり、検査の徹底だけではトラブルは撲滅できない。技術革新に期待したい。