こんちは。チルドです。
みんなが絶賛するし、本屋でもオススメされていたから読んでみたよ。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/03/01
- メディア: 文庫
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あらすじ
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
https://books.google.co.jp/books
旅のラゴスはSFだけど、恋愛あり、冒険あり、年代記もありの、小説の面白さをギュっと詰めた物語だった。
僕の知っている本では、S・キングのダークタワーを想起させる世界観だけれど、こっちの方が舞台としては面白い。
SFらしく、瞬間移動や空中浮遊、憑依というような特殊能力も登場するけど、どれもが童話のような暗喩を含んでいるから、違和感なく物語に溶け込んでいる。
そしてラゴスはヒーローじゃない。
謙虚で常識的な善人だ。悪党に簡単に捕まり、奴隷にもなったりする。巨万の富も栄光にも興味がなく、最愛の女性とも結ばれない。
しかし、僕には、ラゴスがとても豊かな人生を歩んでいる(そう思わせる)ように感じた。
それは、ラゴスの旅が、人を傷つけること、搾取することの虚しさを物語っているからだ。
象徴的なのは、森番の老人ドネルとのやりとりだろう。ドネルにとっては、すでに手遅れだったけど、読者へは「人生を豊かにするのはお前次第だ」という強いメッセージを突きつけてくる。
結局のところ、自分を支配するのは、自分自身でしかないんだよね。僕はラゴスの生き様から、そんなことを学んだよ。