住宅ローン控除が受けられないケースも普通にある
どうも千日です。日銀のマイナス金利政策で銀行間の住宅ローン金利の値下げ競争が激化しています。その恩恵で当初10年間は逆に利息がマイナスになるような状態になっていますね。
でも、それはあくまで住宅ローン控除を満額受けられることが前提です。もしも控除が受けられないことが後から分かっても後の祭りです。
住宅ローン控除は住宅を取得した年の年末調整又は翌年の確定申告で申告しますので、『実は控除を受けられなかった』とか『満額受けられなかった』ということが分かるのは後からなんです。
もちろん、そんな理由で契約解除なんてできません。
それはお気の毒に…
でおしまいです。
そうならないために、今日は住宅ローン控除=住宅借入金等特別控除について税金や法律に詳しくない人でもわかりやすく説明します。
目次
- 住宅ローン控除が受けられないケースも普通にある
今日は盛りだくさんです。では、始めますね。
(蛇足)
今回は結構長文です。いままでは住宅ローン控除について、書くと長くなるし一般受けしないんで敬遠してたんですよ。
しかし、ここ最近は住宅ローン控除についての記事を立て続けに公開しました。
- マイナス金利 住宅ローン控除で実質金利ゼロの返済シミュレーション - 千日のブログ
- マイナス金利 住宅ローン減税は確定利回りの貯蓄と同じです - 千日のブログ
- 住宅ローン10年固定最安0.5%の三井住友信託とは?金利はどこまで下がるか - 千日のブログ
なので、税法についてもちゃんとした記事を書かないのはまずいと思ったのと、コメントで寄せられた質問からどうやら誤った情報が『住宅ジャーナリスト』によってネット上に流れていることが分かりまして…
最終的にリスクを負うのは自分ですから、決断する際には出処のしっかりした情報源から判断し、判断に迷った場合は税務署に直接問い合わせる事をお勧めします。
税務署では匿名での電話相談税についての相談窓口|税について調べる|国税庁も受け付けていますよ。 もちろん無料です。これは利用しない手はありません。
1.住宅ローン控除とは?その2つの上限
住宅ローン控除の正式名称は住宅等借入金特別控除といいます。
各年の12月31日のローン残高×1%をその年の所得税からマイナスする効果です。
新築・中古マンションの購入又は要件を満たすリノベーションやリフォームをして、6カ月以内に住み始め、住宅又はリフォームローンを借りている人は、以後10年間の各年分の所得税から年度末の借入金残高の1%の額を控除することが出来ます。
平成29年12月31日までに居住の用に供した場合の上限は以下のように定められています。
- 一般の住宅:年末借入残高×1% 最高40万円まで
- 認定長期優良又は低炭素住宅:年末借入残高×1% 最高50万円まで
所得税額よりも住宅ローン控除の方が多い場合は翌年度の住民税から控除することが出来ます。住民税から控除できる上限は13万6,500円です。
住宅ローン控除の上限は2つある
住宅ローン控除の上限は1年で40万円(認定長期優良又は低炭素住宅は50万円)ということですが、もう一つの上限は所得税+翌年度の住民税(上限13万6,500円)です。
さすがに税金がマイナスになるということはありません。
天引き前の額面年収と所得税、住民税の目安は以下の通りです。あくまで目安です。
- 年収300万⇒所得税5.6万・住民税11.7万
- 年収350万⇒所得税7万・住民税14.5万
- 年収400万⇒所得税8.7万・住民税17.7万
- 年収450万⇒所得税10.8万・住民税21.1万
- 年収500万⇒所得税14.3万・住民税24.5万
- 年収600万⇒所得税20.9万・住民税31万
- 年収700万⇒所得税32.2万・住民税37.9万
正確な所得税額は源泉徴収票の源泉徴収税額を見て下さい。正確な住民税はお住まいの市役所の税務課で納税証明書を発行して貰えばわかります。
住民税から控除できる上限は13万6,500円ですから、各年収で住宅ローン控除を受けられる上限は以下のようになります。カッコ内はそれに相当する年末借入残高です。
- 年収300万⇒17.3万(1,730万円)
- 年収350万⇒20.6万(2,060万円)
- 年収400万⇒22.3万(2,230万円)
- 年収450万⇒24.4万(2,240万円)
- 年収500万⇒27.9万(2,790万円)
- 年収600万⇒34.3万(3,430万円)
- 年収700万⇒45.8万(4,580万円)
上限40万円(又は50万円)という情報だけで借入残高が多い方が得だと判断するのは早計であるということですね。
住宅ローン控除のメリットを最大限得るためには、初めの年のローンの年末残高が上記のカッコ内の残高を超えないように住宅ローンを借りる金額を調節する必要があります。
2.住宅ローン控除を受けられる人
住宅ローン控除の条件には、控除を受ける人の条件、家屋の条件、借入金の条件の3つがあります。ここでは控除を受ける人の条件を説明します。
- 取得の日から6カ月以内に住み、なおかつ12月末まで住み続けている
- 合計所得金額が3,000万円以下
①取得の日から6カ月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
新築でも中古でも取得の日=引渡しを受けた日ということです。住宅ローン控除では所有権移転登記した日を取得の日とすることが通常の事務です。
居住の用に供したのを証明するのは住民票です。ですから移転登記の日付から6カ月以内に住宅ローン控除を受ける人(世帯主)の住民票を移しておかなければなりません。
住民票の日付はどうしようもありませんが、取得の日については、登記の日以外でも証明する書類が別途あれば登記の日以外にすることが出来ます。
- 契約書の引渡し日付
- 鍵引渡し証の日付
などです。
法律の世界で不動産の登記は自分の所有権を第三者に知らしめる手段(対抗要件といいます)ですので、『実質的な所有権の取得の日と同じとは限らない』という考え方があるからです。
②控除を受ける年分の合計所得金額は3,000万円以下であること。
これだけ稼いでいるなら、減税してあげる必要ないでしょということです。
同感ですね。『ああ~今年は3千万あるから住宅ローン控除受けられないわ…損した』なーんて言ってみたいものですね。
3.控除の対象となる家屋
まず『家屋である』という大前提があります。住宅ローン減税を受けられる家屋って何でしょうか?
家屋とは、不動産登記法上の「建物」と同じ意義のものです。
不動産登記規則111条では「建物は、屋根及び周壁又はそれに類するものを有し、地に定着した構造物であってその目的とする用途に供しうる状態にあるもの」と規定しています。
つまり、屋根と壁があり、基礎によって土地に定着し、住もうと思えば住めるような建物ならば、元が倉庫だろうが馬小屋だろうがこの大前提はクリアできるということです。
それ以降の条件については、新築マンションの場合と中古マンションの場合も殆ど同じです。新築・中古に共通の条件と中古住宅特有の条件があります。
新築・中古に共通の条件
- 床面積50㎡以上の家屋
- 総床面積の半分以上が自己居住用の家屋
中古住宅特有の条件
- 築年数20年(マンションなど耐火建築物は25年)以下であること他
- 同居の親族等から買ったものでないこと
①共通 床面積が50平方メートル以上の家屋であること
壁芯面積が50平方メートル以上でも、内法面積が50平方メートルに満たない場合は住宅ローン控除を受けることが出来ません。
マンションの場合は注意が必要です。
区分所有する部分の床面積になりますが、それは登記簿上表示される、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分です(内法面積)。
マンションのパンフレットに載っている専有面積は壁の中心から内側の面積です(壁芯面積)。
柱が1本で約1平方メートルです。もしも壁芯面積で50平方メートル台前半なら、内法面積では50平方メートルに満たない可能性が高いですので、注意してくださいね。
マメ知識
柱を居住部分の外に出すアウトフレーム工法だと上の図のように、壁芯面積と内法面積の差が小さくなります。最近のマンションでは増えて来ましたね。
②共通 床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供される家屋であること
店舗兼住宅や賃貸アパート兼住宅の場合でも住宅ローン控除を受けられますが、住宅として使用する部分の面積が半分以上なければ、住宅ローン控除を受けることが出来ません。
あくまで、住宅の取得について減税してあげようというのが、この法律の趣旨なんです。
ですので、住宅以外の利用に供する部分がある場合は、居住用の床面積の割合までしか住宅ローン控除を受けられないことになっています。
③中古住宅に特有の条件
中古住宅の場合は、建築後使用されたことのある家屋であること(当たり前ですね)に加え以下の条件があります。
(1)次のいずれかに該当すること
- イ)家屋が建築された日から取得の日までの期間が20年(耐火建築物については25年)以内であること。
- ロ)地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるもの(耐震基準)に適合する建物であること。
- ハ)イ又はロの要件に当てはまらない家屋で、その家屋の取得の日までに耐震改修を行うことについての申請をし、かつ、居住の用に供した日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること。
(2)その家屋の購入時において自己と生計を一にし、その購入後においても引き続き自己と生計を一ににしている親族等から購入したものでないこと。
(1)の条件については、あまりに古いマンションではだめということですね。
マンションは通常、耐火建築物ということになりますので25年以内であれば大丈夫です。ロには書類での証明が必要になりますし、ハは工事費用が掛かります(そもそもマンションでは無理です)。
古民家を改修して和モダンでオシャレにリノベーションして住もうというような場合には考えることになりますが、中古マンションなら築25年以内というのが事実上の分かれ目になるでしょう。
注意して下さい。結構ちゃんとしてそうな出版社の住宅関連サイトに間違った解釈が堂々と公表されています。
間違った解釈の例
中古住宅で住宅ローン控除を受けられるのは築20年(マンション等の耐火建物は25年)までなのでマンションも築15年を超えると控除がまる10年受けられない。
これは、明らかな誤りです。建築から取得の時点で20年(マンション等の耐火建物は25年)以内なら10年分きっちり控除を受けられます。
(2)は同居している家族から購入するというのはダメよということです。
夫名義で10年間住宅ローン控除を受けて、その後同居している妻に売却したことにして、今度は妻が住宅ローン控除を受けるなんてことを繰り返して税金を安くするのはダメということです。
なるほど、そういうテもあったか
こういう法律を考える人って頭がいいんですね。妙なところに感心してしまいます。
4.控除の対象となるリノベーションとリフォーム
2009年の改正前は居住中の住宅へのリフォームしか認められませんでしたが、改正後は中古住宅を購入してリノベーション・リフォームする場合の工事代金の借入金でも住宅ローン控除できるようになりました。
もちろん、中古住宅が前述した中古マンションの条件に当てはまっていれば、住宅の購入資金の借入にも住宅ローン控除が受けられます。
- 増改築等工事証明書
- 工事費用100万円以上
- 工事費用の半分以上を居住用スペースにかけた
- 工事をした後の床面積が50㎡以上である
- 工事をした後の床面積の半分以上を居住用スペースとしている
- 工事をした後の家屋が主に居住用と認められるものであること
①増改築等工事証明書
リノベーション・リフォーム工事が建築士による証明書によって証明されていることが必要です。工務店に工事を発注する段階で、この証明書が取れるか確認しておく必要があります。
この工事証明書の発行を請け負う建築事務所もあるようです。安い所だと、だいたい2万~3万円位で出してくれるみたいですが、工事の規模にもよるでしょう。
この点、リノベーションの専門業者ならこの条件についてもちゃんと対応して貰えるので安心です。
リノベーション専門のリノべる。は物件探しからローン、設計まで1ストップ
②工事の費用の額(補助金などがある場合はそれを差し引いた額)が100万円を超えること
水回り以外の中古マンションの床と壁紙を全部新品にして間取りを少し変えれば、100万円位にはなるでしょうね。
良い工務店を探して相見積もりを取りましょう。値段があるようで無い世界ですリフォームを確実に安くする方法『大工 ブログ』で地元の信用できる大工さんを探す - 千日のブログでも詳しく説明してますが、腕の良い大工さんなら個人でも建築事務所と太いパイプを持っています。
①の工事証明書についても相談してみて下さい。
③工事費用の半分以上が居住用部分にかけたものであること
店舗兼住宅や賃貸アパート兼住宅のような場合です。リフォームやリノベーションにかかった工事費用の半分超が店舗や賃貸部分にかけたものだったら、住宅ローン控除は受けられません。
購入の時と同じ趣旨です。あくまで住宅として工事する場合にだけ減税の恩恵があるんですね。
④工事をした後の家屋の床面積が50㎡以上であること
これは、新築・中古のマンションと同じ事です。リフォーム後に内法面積で50平米を下回ってしまうと住居ローン減税を受けられません。
まぁ狭くなるようなリフォームをする人は少数派でしょうが…
⑤工事をした後の家屋の床面積の2分の1以上が居住用であること
これも、新築・中古マンションと同じ趣旨です。リノベーションやリフォームによって、店舗部分や賃貸アパートの床面積が2分の1を超えてしまうとアウトです。
気になるのは新築・中古住居の取得時点では100%居住用とし、その後リフォームによって半分以上を店舗にした場合ですね。
こういう場合、本体の住居ローン控除はどうなるか?実はこのケースについては後述する控除が受けられなくなる年分に明文で規定されていません。
という事で代表して千日が聞いてみました。長くなりますので次回のエントリーで公開します。
⑥工事をした後の家屋が主として居住の用に供すると認められること
5.控除の対象となる住宅ローン
- 10年という返済期間の条件
- 住宅の購入又は増改築等の資金に充てるという用途の条件
なお、その借入金が住宅ローン控除の対象となる場合には、その借入金の貸付をした金融機関や工事業者から「住宅のみ」、「土地等のみ」又は「住宅及び土地等」の内訳に応じた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が発行されます。
①10年という返済期間の意味
据え置き期間があるケース
繰上げ返済するケース
②資金の用途の条件
控除の対象とならない借入金もある
ここまでの要件に当てはまる債務であっても、次の4つに該当するものは住宅ローン控除の対象にならないので注意が必要です。
- 家屋の新築の日より前に購入した土地のローンだけが残っていて、家屋の新築に係るローン残高が無い場合
- サラリーマンが会社から住宅資金を借りている場合で、それが無利息又は利率が1%未満の場合
- サラリーマンが会社から住宅資金を借りている場合で、その利率が1%以上であっても、別途会社から利息相当の手当を受けるなどして実質的に利率が1%を下回る場合
- サラリーマンが会社から時価の2分の1未満の価格で家屋又は敷地を買った場合
戸建ての場合は1.に注意が必要ですが、普通に建売住宅やマンションを購入して、銀行などの金融機関から住宅ローンを借りていれば、問題になることはないでしょう。
6.控除が受けられない年分
- 自己の合計所得金額が3,000万円を超える年分
- 転勤で家屋を居住の用に供しなくなった年以後の年分
- 賃貸等で家屋を居住の用に供しなくなった年以後の年分
- 認定住宅の認定が取り消された場合
①合計所得金額が3,000万円を超えたらその年は控除なし
②転勤などによって誰も住んでいない場合
取得後6カ月以内に入居し、各年の12月31日まで引き続き住んでいることが条件です。ですので、転勤期間が年をまたいで、12月31日に誰も住んでいない状態になると、その年分の住宅ローン控除は受けられません。
ただし、転勤命令が解除されて再び家に戻ってくれば、残りの年分について住宅ローン控除が受けられます。
また、単身赴任であり、かつ転勤先が国内である場合は、扶養家族が住んでいるということで転勤中も住宅ローン控除を受けられます。
③自宅を賃貸等に出して自分は住んでいない場合
「自己居住のための住宅であること」が条件の一つですから、誰かが住居として使っていても、本人以外の場合は住宅ローン控除がストップします。
ですから、友人などに長期にわたって無償で住まわせても、本人が住んでいない限りは住宅ローン控除を受けられません。
④認定住宅の認定が取り消された場合
長期優良住宅、あるいは低炭素住宅を取得して「認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例」を受けている人の注意点です。
この認定には法律に定める認定基準をすべて満たさなければなりません。そのため、これに違反して認定の取り消しを受けた場合には、長期優良住宅と認められなくなります。
そして、長期優良住宅として認められなくなると同時に、住宅ローン減税の適用も受けられなくなります。『一般住宅』としても住宅ローン減税の適用を受けることもできません。
厳しいですね、十分お気を付けください。
7.まとめ
以上、千日のブログでした。
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