【移民危機】「不法経済移民は欧州に来てはいけない」 EU大統領
- 2016年03月4日
欧州連合(EU)のトゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)は3日、不法経済移民は欧州に来てはいけないと警告した。仕事目当てで違法に欧州を目指す人たちは、「命と金を」無駄にしていると述べた。
アテネ訪問中のトゥスク氏は、ギリシャのチプラス首相と会談後、「不法経済移民になろうとするすべての人に」と呼びかけ、「欧州に来てはいけない。密航業者を信じてはいけない。命を金をかけてはいけない。無駄に終わる」と警告した。
トゥスク氏はさらにEU加盟国に対し、移民危機対策を単独で実施しないよう呼びかけた。
トゥスクは3日にギリシャから欧州を西へ向かう移民の数を減らす方策を協議するため、ギリシャを訪れた。
欧州の国境取り締まり強化によって2万5000人以上の移民がギリシャ国内に足止めされており、人道的危機の発生が懸念されている。
3日にはマケドニア政府による移動規制に抗議する移民の集団が、国境のギリシャ側で線路をふさいで抗議した。
バルカン半島の複数の国が通行許可をシリアやイラクの移民に限定したのに加え、オーストリア政府も受け入れ制限を決定した。
これによってアフガニスタン人や経済難民とみなされる数千、数万の人たちが、西ヨーロッパにたどり着くことが実質的にできなくなった。
移民対策について7日に予定されるEU・トルコ首脳会議を前に、トゥスク議長は3日にトルコも訪れ、ダウトオール首相と会談した。
ダウトオール首相は、シリア内戦の武力行為停止がこのまま持続すれば、シリア難民の流れは減ると指摘した上で、シリア政府やロシア軍による違反のせいで停戦が続くかは不透明だと批判した。
ギリシャのレスボス島で取材するBBCのクリス・モリス特派員は、EUはギリシャを訪れる移民の数を1日1000人未満に抑えようとしていると話す。レスボス島には今年だけですでに7万5000人が上陸している。
昨年、地中海を渡って欧州に到達した移民の数は約100万人。今年は年末よりかなり手前でその数に達するのではないかと見られている。
欧州委員会は2日、移民への人道支援策として今後3年間で700億ユーロ(約8兆6600億円)を拠出する計画に合意した。
国際移住機関(IOM)によると、2016年にはすでに12万9500人近い移民が海路で、1545人が陸路で欧州に到着している。418人が溺死もしくは行方不明になっているという。
<用語について> BBCは、亡命申請の法的手続きを終えていない、移住中の人すべてを「移民」(migrants)と呼んでいる。この中には、戦争で引き裂かれているシリアのような国を逃れて移動し、難民認定される可能性の高い人たちも含まれる。また、各国政府に「経済移民」と分類される可能性の高い、より良い職業や生活を求めて移動している人たちも、「移民」に含まれる。
(英語記事 EU's Tusk warns illegal economic migrants: Do not come here)