3匹目狙う…さよなら「泥臭い」 カボスで養殖
大分の研究センター 「かぼすブリ」「かぼすヒラメ」成功
泥のない状態で養殖しているのに、「泥臭い」イメージがなかなか抜けないドジョウ。こうした「偏見」を払拭(ふっしょく)しようと、大分県農林水産研究指導センターが、県特産のかんきつ類・カボスの香りがする新品種「かぼすドジョウ」の開発に乗り出した。カボスを餌に混ぜて身から香りが出るようにし、県がブランド魚として売り出している「かぼすブリ」「かぼすヒラメ」のノウハウを応用。ドジョウの香りを強めて大量養殖する技術に挑戦している。
かぼすドジョウを研究しているのは同センター水産研究部・内水面チーム(同県宇佐市)。かぼすブリの開発に携わった主幹研究員の徳丸泰久さん(50)を中心に、昨年4月にスタートした。
同チームは元々、水田を有効活用しようとドジョウ養殖の研究を担当し、2003年度までに泥のない屋内の水槽で養殖する技術を確立。温泉の湯を使い、身が大きく骨の軟らかいドジョウの育成に成功した。宇佐市などでは昭和50年代以前には田んぼで取れたドジョウを食べる習慣があり、06年以降に養殖が盛んになると市内の消費量が増えた。
ドジョウの生産量は全国的な統計がないが、県内では15年に過去最高の24.4トンを記録。近年は東京・浅草にある老舗のどじょう料理専門店にも出荷し、認知度を高めようと地元の祭りなどでPRしている。
ところが、泥のない養殖ものが主流になったのに、一部の消費者からは依然「泥臭そう」と敬遠されがちという。納得がいかない徳丸さんらは「いっそドジョウに良い香りをつけ、ドジョウ好きを増やそう」と発案した。
そこで着目したのがカボスの香りをつけたかぼすブリやかぼすヒラメだ。県などが他県の魚と差別化しようと開発したもので、県漁業管理課によると、かぼすブリの県内の出荷量は10年度の約90トンから14年度に約418トンまで増え、知名度は上昇してきている。
同チームは15年度はカボスの果汁や果皮などを混ぜた餌を、生後120日のドジョウに約3カ月与えた。その結果、ドジョウ100グラムからカボスの香り成分リモネン0.01ミリグラムを検出した。
ただし「まだ香りは10人に1人が気づく程度」(徳丸さん)の低濃度。16年度は餌の形をドジョウが食べやすいように改良し再挑戦する。徳丸さんは「今秋には生産者を招いた初の試食会を開きたい」と意気込んでいる。【田畠広景】