不平等に関するこれまでの議論は政府主導の「再分配」に焦点を合わせてきたが、張教授は分配のスタート地点となる「源泉的分配」を攻撃対象にしている。源泉的分配がきちんと動かないせいで発生した所得不平等が、全ての不平等の発源地だというのだ。張教授は、極度に不平等な源泉的分配を放置したまま、事後更正する再分配だけで不平等問題を解決することはできないと考えている。
張教授は、診断にとどまらず代案も提示している。中小企業が労働者に適正な賃金を支払えるよう、企業の利益分配構造を改革すべきだという。大企業が持っていく収益比重を0.6ポイント下げ、大企業の社員が賃金の5%を下請けの中小企業の分として譲歩すれば、中小企業労働者の賃金を17.4%も引き上げることが可能、という例を示している。
しかし、大企業が即座に行いを改める可能性はゼロに近い。そこで張教授は、未来の主人公たる青年に「怒って行動せよ」と求めている。具体的には、2016年の総選挙、翌17年の大統領選挙で「投票参加」により審判を下すべきだとアドバイスしている。468ページ、2万2000ウォン(約2300円)。