昨年末に1冊の本をいただいた。1979年生まれの日本人の著者は本来、メモ用紙1枚すらも捨てられない性格だったという。部屋の中には必要のない物が山積みになっていたが、それでも手に入らない物を持つことを夢見て、「あれさえあれば幸せになれるのに」という思いに駆られ、いら立ちを募らせていた。
そんな彼が偶然、「捨てる美学」を知ったことで、180度変わった。不必要なものを処分したことで心に余裕が生まれ、所有することへの執着心がなくなっていった。現在、たんすの中の衣服は10着に満たず、浴室にはせっけん1個とタオル1枚があるだけだが、心の中は過去にないほど幸せだという。
記者も新年を迎える前に大掃除をしたが、ものすごい量の不必要な物が山になったのに驚き、自己嫌悪に陥るほどだったため、かの本の著者には共感を覚えた。似たような経験をした人が多いからなのか、この本は最近まで、売り上げランキングが10位前後のベストセラーとなっていた。ところが少し前、この本の出版元の関係者から意外な話を聞いた。この本は日本でベストセラーになったため、韓国でもある程度売れると予想されたが、予想外に売れ行きが良かったため、出版元もいぶかしんだという。「最近の若い世代は、何かを夢見たり、手に入れたりしようとしても、社会の構造的な限界のため諦めるケースが多いでしょう。手に入れたくてうずうずしても、結局その欲望を断ち切る人が多いが、そんなトレンドに符合したからこそ、今回の好調な売れ行きにつながったのではないか」