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介護の有効求人倍率 大都市圏で4倍超も
1月29日 16時26分

人手不足が深刻さを増している介護に関連する職種の去年1年間の有効求人倍率は、東京都や愛知県で4倍を超えるなど、3大都市圏で特に高くなっていることが分かりました。厚生労働省は、人材確保の取り組みを強化する必要があるとしています。
厚生労働省によりますと、仕事を求めている人、1人に対して企業から何人の求人があるかを示す有効求人倍率のうち、福祉施設のヘルパーなど介護に関連する職種の倍率は去年1年間で2.59倍と、すべての職種の倍率を1.39ポイント上回りました。
都道府県別で▽最も高かったのは東京都の4.75倍で、▽次いで愛知県が4.04倍、▽岐阜県が3.82倍、▽富山県が3.51倍、▽千葉県が3.15倍、▽三重県が3.07倍、▽大阪府が3.03倍などと、3大都市圏を中心に高くなっています。
最も低い高知県でも1.34倍で、すべての都道府県で求人数が仕事を求める人を上回り、全国的に人手不足が広がっている状況を伺わせています。これについて厚生労働省は、「高齢化が急速に進む中で、人材の確保が追いつかない状態がますます深刻になっている。こうした傾向は大都市を中心にさらに進む見込みで、人材確保の取り組みを強化していく必要がある」としています。

訪問介護事業所で廃止の動き

東京都の資料によりますと、去年1年間に都内に新しくできた介護サービスの事業所は2282件で、前の年よりおよそ300件少なくなったのに対し、廃止された事業所は1397件と、前の年に比べておよそ1.4倍に増えました。
このうち、都外から進出してきた法人の事業所の廃止は164件で、前の年の2倍余りに増え、この中には必要な人材を確保できずに廃止に追い込まれたケースもあるということです。
大阪市に本社がある介護サービス会社は、去年、東京都内で運営していた訪問介護の事業所49か所のうち、5か所を廃止しました。このうち、3年前に渋谷区内に開設した事業所では、非常勤のヘルパーをほとんど採用することができず、職員の休日を減らしたり、ほかの事業所からヘルパーに来てもらったりして訪問介護に対応していました。
しかし、職員の負担が大きかったうえ、人手が足りないことで新たな利用者の申し込みを断ることも多くなり、結局、去年10月に事業所を廃止しました。この事業所で介護保険のサービスを利用していたおよそ40人は、それぞれ、ほかの事業所で受け入れることができましたが、中には、廃止の直前まで受け入れ先が見つからないケースもあったということです。廃止した事業所を管理していた介護サービス会社の守国寿さんは「去年4月に介護報酬が引き下げられた影響で、収益が下がったうえに人手不足がのしかかり、事業所の運営が成り立たなくなった。給与を上げないと人も集まらず、待遇改善を考えていかなければ、今後、介護の業界は成り立たなくなると思う」と話しています。

「老人漂流社会になりかねない」

特別養護老人ホームの経営者で、東京都社会福祉協議会で高齢者施設の実態を調査している田中雅英さんは、「比較的経営体力があって、介護の受け皿として期待されてきた地方法人でも人材の確保に苦労し、一部では撤退の動きすら始まっている。職員の待遇改善を可能にする介護報酬の大幅な引き上げが必要で、『給料が安い』というレッテルを剥がしていかなければならない。このままでは東京の介護が崩壊し、行き場をなくした高齢者があふれる『老人漂流社会』になりかねない」と話しています。

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