TEDxWomen Talk about Online Harassment & Cyber Mobs
TEDx女性 オンラインでの嫌がらせとサイバー・モブについて話そう
2012/12/5
Anita Sarkeesian
原文はこちら。http://feministfrequency.com/2012/12/05/tedxwomen-talk-on-sexist-harassment-cyber-mobs/
[Anita SarkeesianはKickstarterというファンドレイジングサイトで、ゲームにおける性差別的な女性の表象について教育目的の動画シリーズ「Tropes vs Women in Video Games」を作成するプロジェクトへのファンドレイズを始め、非常に大規模なオンラインでのハラスメントや脅迫を受けました。この記事は、Anitaが運営するFeminist Frequencyというサイトに、彼女が自身のTEDトークについて書いた記事の翻訳です。]
今年、Paley Center for Mediaが毎年開催するワシントンDCでの「TEDx女性」に参加できて幸せでした。私は、性差別的なオンラインの嫌がらせ、サイバー・モブ、そしてオンラインでのコミュニケーションの破壊的であったり、勇気づけたりする力について10分のトークをしました。このトークの中で、私はMMO(Massively Multiplayer Online Game: 大規模で複数プレーヤーのいるオンラインゲーム)のアナロジーを使って、いかにこういう大規模なハラスメントキャンペーンが展開しているのかを説明しました。
この夏、Kickstarterでプロジェクトへのファンドレイジング・キャンペーンがメディアからの注目を浴びたあと、私はこれを多くの女性がゲーム空間、より広くはインターネット上で直面するオンライン上の嫌がらせという大きな問題への関心を高める機会として戦略的に使おうと決めました。その目的のために、過去数カ月間、このトークも含め、多くの講演をしたり、メディアのインタビューに答えたり、この問題についてゲーム会社とやり取りをするのに多大な時間とエネルギーを費やしてきました。長い間、オンラインやゲーム上のハラスメントについて声を上げてきた素晴らしい女性たちがたくさんおり、私もこの重要な対話に自分の個人的なストーリーを使って貢献したいと思っていました。これは私がよりハラスメントのターゲットになりやすくなるだけでなく、Tropes vs Womenのビデオシリーズ制作のための時間が奪われるという意味でも、難しい決断でした(正直、シリーズ制作のために、持てる時間の全てを費やしたいのです)。それでも、私が私の経験を共有することが、システムの変化やよりインクルーシブなデジタル世界への小さな一歩になるとしたら、最終的にこのトレードオフは価値があると思っています。
そして、心配しないでください。私のTropes vs Women in Video Gamesシリーズは現在製作中で、私たちはこのビデオを可能な限り包括的なものにするべく尽力しています。進捗状況も悪く無いとお伝え出来て嬉しいです!いつもどおり、プロジェクト支援者の方には最初にプロジェクトの更新や詳細についてお伝えしますので、Kicstarterのページを定期的に確認してくださいね!
Anita Sarkeesian at TEDxWomen 2012
[トークの書き起こし]
今日は私がどのようにして、偶然にも、現実世界で、巨大なオンラインゲームの悪役になってしまったかを話したいと思います。
過去4年ほど、私はYouTubeでFeminist Frequencyというメディアにおける女性の表象を脱構築するビデオシリーズを作っていました。わかりやすい言葉を使って、テレビ番組、映画、漫画、ビデオゲームなどのポップカルチャーのセクシズムやジェンダーの問題について語るための言葉を提供するツールを作ろうとしていたのです。とくにビデオゲームは、今日、最も速く成長するマスメディアの形態として非常に興味深いものです。
これは私が10歳のころ、任天堂のスーパーマリオワールドで遊んでいたときの写真です。私は長いことゲームを遊んできたし、楽しいだけでなく、ポジティヴな恩恵も多くありました。だから、私はずっとゲームで遊んできたのですが、いつも、引っかかることがあったのです。
ビデオゲーム業界があらゆるメディアのなかでも、最も性的に客体化され、ステレオタイプ的で、あからさまに抑圧的な女性の描き方をするということは秘密でもなんでもありません。
それを念頭に置いて、クラウドファンディングサイトのKickstarterで、とくにビデオゲームにおいて女性が描かれる方法を見ていくビデオシリーズを作るためのファンドレイジング・キャンペーンを始めることにしました。
もしプロジェクトに興味があれば寄付できるし、そうでなければ、寄付しなければ良いのです。すごく単純ではないですか?つまり、なんの問題が起こり得るというのでしょう?
そうなんです。
このプロジェクトについて、言葉を選べば、あまり快く思わない男性ゲーマーたちがいたのです。
私はポップカルチャー批評家で、フェミニストで、女性です。これらを隠していないし、だからオンライン上での性差別的なバックラッシュを全く知らないというわけではありませんでした。悲しいことですが、性差別的な中傷や侮蔑には慣れてしまっています。でも、今回起こったことは少し違いました。私は大規模なオンラインでのヘイトキャンペーンのターゲットになったのです。
次のいくつかのスライドで、私が受けたハラスメントのほんの一部だけを見せようと思います。ひどい内容が含まれますから注意してください。
私のソーシャル・メディア・サイトはすべてレイプ、暴力、性的暴行、殺人の脅迫で溢れました。そして、お気づきでしょうが、これらの脅迫やコメントは、すべて私のジェンダーをターゲットにするものでした。
ウィキペディアの私の記事は性差別的、人種主義的、そしてポルノ的なイメージでめちゃくちゃにされました。
私のKickstarterやYoutube、Twitterなどのソーシャル・メディアのアカウントをとにかく報告するキャンペーンもありました。詐欺とか、スパムとか、テロリズムだとさえ理由をつけて報告し、私のアカウントが停止されるようにしたのです。
彼らは私のウェブサイトがオンラインで閲覧不可能になるよう、私のメールやその他のアカウントをハッキングしようとしました。私の住所や電話番号を含む個人情報を集めて拡散しようともしました。
私と思われる人がビデオゲームのキャラクターにレイプされるイメージ、ポルノ的なイメージが作られ、何度も何度も私に送りつけられてきました。
プレイヤーがスクリーンをクリックすると、私の写真がどんどん殴られ、あざができていくという「ビッチを殴り倒」すゲームさえ作られました。もう十分ですか?では進みましょう。
こういうあからさまで大規模な女性嫌悪の誇示よりももっと気分が悪いことは、これ以上に気分の悪くなるようなことが可能だとすれば、これに加担している人たちはこのハラスメント・キャンペーンや嫌がらせを、堂々と「ゲーム」だと言っていたことです。虐待をゲームだと。
つまり、彼ら的には、彼ら自身は大規模な複数プレイヤーのオンラインゲームのヒーローの役で、一緒になって敵を倒そうとしているというフィクションを作っているわけです。明らかに、彼らは私を悪役としていました。私の悪意に満ちた壮大な計画が何だったかって?ゲームにおける女性表象についての動画を作ってYoutubeにアップすること。そうです。
彼らが虐待を「楽しいゲーム」と思っているなら、このことを考えてみましょう。
誰がプレーヤーなのか?
オンライン・ハラスメントといえば両親と同居してる10代の男の子たちを思い浮かべることが多く、私も10代の男の子たちから攻撃を受けましたが、たくさんの成人男性からも攻撃を受けました。
男性ゲーマーの平均年齢がだいたい30歳であることを考えれば、このことは驚くべきことでもありません。
どこでこのゲームはプレイされているのか?
彼らはインターネット上のあらゆる場所を戦場にします。私の場合、私がこれまでオンラインでやったなんでも、あらゆることをつけ回しました。彼らはホームベースをもっていて、そこで嫌がらせについて協力体制を整えますが、これはたいてい誰かリーダーに指導されているわけではなく、匿名の掲示板やフォーラムで行われます。こういう場所にはほんとうの意味での説明責任のメカニズムがありません。
目的は何なのか?
直近の明らかなゴールは、悪役をとめてゲームを…私、そして頭の狂ったフェミニストの陰謀から救うことです。私を黙らせ、私と私のプロジェクトの信用を落とすことで、これを実現しようとしています。
しかし、より大きな暗黙のゴールは、男の空間としてのビデオゲームの現状、誰も疑問を挟まない男の子クラブの特権と権利を維持することです。
これはどんなゲームなのか?
根本的にこれは社会的なものです。
私たちはオンライン・ハラスメントを社会的な行動としてあまり考えませんが、彼らが使う戦略などを見れば、彼らが一人でやっているのではなく、ゆるく互いにつながって協力しあっているのは明らかです。
この社会的な要素は、プレイヤーがハラスメントに加わり、さらにはエスカレートさせていくインセンティヴとなる、強力な動機付けの要素担っています。攻撃に加担すると、他の仲間からの称賛と承認を獲得できるのです。プレイヤーがますますひどく暴力的な攻撃をするたび「インターネット・ポイント」がたまっていくインフォーマルな報酬システムのようなものと考えることができます。自分たちがやったことを記録し、掲示板に証拠として持ち帰り、互いに見せ合うのです。達成したことのトロフィーであるかのように。
ソーシャルゲームの構造があ、プレイヤーがいて、悪役がいます。戦場があり、インフォーマルな報酬システムもあります。
でもこれは、これはゲームではありません。これは、大規模の怒りに満ちた女性嫌悪の誇示です。「男の子はそういうもの」なんてものじゃありません。
「インターネットってそういうもの」なんてものでもありません。
私たちが無視を続ければ、なくなることなどないでしょう。
全然ゲームなんかではありません。
では一体何なのでしょう?オンライン・ハラスメントを表現するのに「サイバーいじめ」「サイバー・ストーキング」とか荒らしとか言ったりしますが、こういった言葉はこんな規模でのヘイト・キャンペーンを適切に表現できていません。
私に起こったこと、そして悲しいことに他の女性が直面していることは、サイバー・モブというのが適切でしょう。
サイバー・モブにしろ、単に大量のヘイトに満ちたコメントにしろ、その最終的な結果は、攻撃に加担する男性が仲間に支持され、性差別的な態度や振る舞いに報奨をあたえられ、女性が黙らされ、周縁化され、完全な参加から排除される性差別の文化を維持し、補強し、常態化させることです。
「男の子クラブ」とはつまり女の子は参加が許されないということです。どうやって男の子が女の子たちを追い出すか?こうです。耐えられないほど有毒で敵対的な環境を作り上げるだけです。
ほんとうに気が重くなる話ですよね、でも、この話には別の面もあります。
私のファンドレイズ・プロジェクトが最終的にどうなったか知りたくはありませんか?まず、私が今日ここに立っていることがその証拠ですが、サイバー・モブは私をだまらせることができませんでした。そして、ゲームにおける女性の描かれ方を脱構築するプロジェクトに関心のある人、そして私たちゲーマーのコミュニティをしばしば苛むハラスメントに激怒した人がたくさんいるということがわかりました。
実際、私は最初に設定していた目標金額の25倍もの寄付を獲得できました。7000人近くの個人が私のTropes vs. Women in Video Gamesプロジェクトを私が想像したよりもずっと大きく、より良く、より包括的なものにするのを助けてくれました。当初考えたように、ただ5本の動画を作るだけでなく、いまや13の動画と教育者が無料で使える教育カリキュラムまでできました。Feminist Frequencyはパートタイムのプロジェクトからフルタイムの試みに変わりました。
数えきれないほどの支持と励ましの言葉を受け取りました。多くの人が、私と私のプロジェクトに、動画やファンアート、マンガやブログなどを通じて連帯の気持ちを表現してくれました。国外のビデオゲーム制作会社に講演に招待されたほどです。
私が受けた驚くべき支持は、大きな文化的な変化が水平線の向こうから少しずつ顔を出そうとしていることの小さな現れです。すべてのジェンダーのゲーマーとゲーム開発者たちはゲーム文化の中での女性の扱いに飽々しており、変化を求めて声を上げています。
変化はゆっくりとしていて、道は平坦ではありません。しかし、起こっています。
毎日、私は耐え、変化を起こすために活動し、黙ることを拒否する女性たちに勇気づけられています。私達が協力すれば、女性が恐れたり萎縮したりすることなく、脅迫や嫌がらせの恐れもなく、デジタル世界に完全に、能動的に参加できるようにするための文化的な変化を起こすことができると心から信じています。ありがとうございました。