トップページBusinessニュース「下町ボブスレ-」 ジャマイカ代表が採用へ
ニュース詳細

「下町ボブスレ-」 ジャマイカ代表が採用へ
1月16日 19時38分

「下町ボブスレ-」 ジャマイカ代表が採用へ
k10010374331_201601161945_201601161952.mp4
東京・大田区の町工場のグループが「下町ボブスレー」の愛称で開発を進めている、冬のスポーツ・ボブスレー用のそりが、映画のモデルになって人気を博した南国・ジャマイカの代表チームに採用されることになりました。町工場のグループがジャマイカ代表とともに再来年、開かれる、冬のオリンピック出場を目指すことになりました。
「下町ボブスレー」は、東京・大田区の中小・零細企業などのべ100社が開発したボブスレー用のそりで、町工場のグループは、再来年、韓国で開かれるピョンチャンオリンピックで日本代表に採用してもらおうとテストを受けましたが、不採用とされました。
このためグループは、ほかの国の代表チームへの提供を模索してきましたが、その結果、ジャマイカ代表に採用されることで双方が基本合意に達したということです。
ボブスレーのジャマイカ代表は1988年のカルガリーオリンピックで、冬のスポーツになじみのない南の国からの出場として話題となり、映画「クールランニング」のモデルにもなりました。ジャマイカ代表のチームは日本を訪れ、15日から長野市内のボブスレーのコースで実際に「下町ボブスレー」に乗って性能の高さを確認し採用の方針を固めました。
ジャマイカ代表は資金不足が課題となっていることから、町工場のグループは無償でそりを提供しスポンサー探しでも協力する方針で、日本代表の不採用通知から一転して再び冬のオリンピックを目指すことになりました。

オリンピック代表の採用は悲願

「下町ボブスレー」がオリンピックの代表チームで使われることは、東京・大田区の町工場のグループにとって“悲願”と言えます。
このプロジェクトがスタートしたのは5年前の平成23年です。「世界一軽いそり」を目指して「下町ボブスレー」と名付けたそりの開発に乗り出しました。ものづくりの中小・零細企業が集積する東京・大田区は、金属加工や板金など高い技術を持った職人たちが多くいましたが、少子高齢化による後継者の不足などで、ピークには9000社を超えた町工場が今では半分以下になっています。
この苦境を打開したいと町工場の社長たちが目指したのが、スポーツの祭典オリンピックへの出場、そして目指す競技は氷上のF1とも言われるボブスレーでした。世界の強豪チームのそりはBMWなど名だたる自動車のメーカーが開発しており、独自に開発したそりで日本代表が活躍すれば、世界に「大田区」の技術を発信できると考えたのです。実戦での使用や改良も何度も積み重ね、ソチオリンピックで日本代表の選手が使うかどうかの採用テストにこぎ着けましたが、選手からは改良を求める要望が寄せられ、採用は見送られました。
グループは再来年韓国で開かれるピョンチャンオリンピックを目指してそりの改良に取り組みましたが、去年11月に行われた採用テストで再び不採用が決定し、記者会見でグループの代表は「目の前が真っ暗になった」と悔しさをにじませました。
ただ、「オリンピック出場は町工場の夢だ」として、ほかの国の代表チームにそりを提供してピョンチャンオリンピックを目指すことになり、人脈などをたどって各国の大使館を訪ねたり、選手と面会したりして性能などをアピール。地道な取り組みが実を結び、ジャマイカの代表チームが滑走テストで長野を訪れたのです。

ジャマイカ代表の軌跡

ジャマイカの代表チームは1988年、カナダで行われたカルガリーオリンピックに初めて登場しました。結果は最下位ながらも、冬のスポーツ・ボブスレーに雪の降らない南国・カリブ海の国からの参戦で、当時大きな話題を呼びました。また、この話をモデルにした映画「クールランニング」も世界で上映されました。
カルガリー大会のあとも4大会連続でオリンピックに出場し、このうち1994年にノルウェーで行われたリレハンメルオリンピックでは、4人乗りで14位の好成績を残し世界を驚かせました。しかし資金不足などの課題もあってその後の大会は欠場し、出場にこぎつけた前回ソチオリンピックでは、会場までの旅費が捻出できず、選手みずから支援を呼びかけ、日本円で1300万円余りを集め、なんとか参加にこぎ着けました。苦難を乗り越えての3大会ぶりの出場とあって、「クールランニング」の再来とも言われました。この時も最下位と結果こそ振るいませんでしたが、当時ジャマイカ政府の観光局が制作した代表チームの応援歌が動画投稿サイトにアップされると、瞬く間に世界中から注目の的となりました。
冬のスポーツでメダリストを輩出したいジャマイカの代表と、世界に技術力の高さをアピールしたい東京・大田区の町工場、双方の思いが通じ合い、2年後に迫るオリンピックでの活躍を目指すことになりました。

ジャマイカ連盟会長「真摯な取り組みに感銘」

ジャマイカボブスレー連盟のクリス・ストークス会長は「下町の最高の技術力とものづくりに対する真摯(しんし)な取り組みに感銘を受けた。今後は、世界大会でそりを使いながら改良を加え最終的には、ピョンチャンオリンピックで使いたいと思っている」と話していました。
またプロジェクトの責任者を務める細貝淳一さんは「不採用が続いたものの、世界一の身体能力を持ったジャマイカの選手と、世界のものづくり力をもった私たちがボブスレーの分野で世界を目指すというのは、本当に価値あることだ」と話していました。

関連ニュース

k10010374331000.html

関連ニュース[自動検索]

このページの先頭へ