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民主・緒方氏の質問は「全くの嘘」 熊本の講演会で被害者家族らが批判
12日の衆院予算委員会で民主党の緒方林太郎氏(比例九州)が「首相は拉致を使ってのし上がったのか」と発言したことが、拉致被害者の早期帰国を求める家族らに波紋を広げている。熊本市で13日夜に開かれた講演会では、特定失踪者問題調査会の荒木和博代表や拉致被害者家族が、緒方氏の発言を批判し、解決への期待を改めて示した。
緒方氏は予算委において、拉致被害者の蓮池薫氏の兄で、家族会元事務局長の透氏による著書「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」(講談社)を引用した。特に、平成14年の拉致被害者5人の帰国に際して、当時官房副長官だった安倍首相が、5人が北朝鮮に戻ることを止めようとはしなかった、などとする記述があることを紹介した。蓮池透氏について家族会は22年3月、退会を決めた。
講演会で荒木氏は「緒方氏の質問で出たことは全くの嘘。平成14年に一時帰国した5人を、安倍首相と内閣参与だった中山恭子氏の2人が『北朝鮮に帰さない』と主張してブレーキがかかったのが事実だ。北朝鮮に戻そうと躍起になっていたのは、緒方氏の出身である外務省だった。緒方氏はまさに自分で自分に唾を吐いた格好だ」と批判した。
一方で荒木氏は、拉致被害問題を再調査するとした26年5月のストックホルム合意から1年半が経過した現在も、進展がない状況についても憤った。「(政府は)具体的に交渉を進めていないことは反省してほしい。政治家は拉致でのし上がってもよい。被害者を救出してくれたら、それで十分だ」と訴えた。
昭和53年8月に鹿児島県から北朝鮮に連れ去られた増元るみ子さん(62)=拉致当時(24)=の姉、平野フミ子さん(65)は、14年9月に外務省を通じて拉致被害者の「死亡確認」が伝達された際のエピソードを披露した。
「(伝達の)翌朝8時ぐらいに安倍さんがいらして『あの死亡という報告は北朝鮮からの一方的な報告で、(日本政府として)何も確認してない』と、わざわざ知らせに来てくれた。日本の政治家にもこんな人がいるんだ、と家族会みんなが思った。そこから新たな闘いが始まった」と述懐した。「安倍さんは拉致で首相になった、でよい。ただ、私たちを裏切らず、結果を出してほしい」と述べた。
講演会は、拉致被害者救出に向けた活動を続ける予備自衛官や自衛官OBの民間団体「予備役ブルーリボンの会」が主催し、「拉致被害者救出と自衛隊」をテーマに開いた。(谷田智恒)