福井総裁時、物価上昇率の目標発表に慎重姿勢
日銀は15日、2005年7〜12月に開いた計8回の金融政策決定会合の議事録を公表した。デフレ脱却を目指す日銀は現在、物価上昇率を2%にする目標を掲げているが、当時の日銀内では想定する物価上昇率を公表することについて激しい議論が交わされていた。06年3月に量的緩和を解除した際、物価安定の水準を「物価上昇率0〜2%程度」と公表するが、当時の福井俊彦総裁がこうした数値の公表に極めて慎重だったことが明らかになった。
今回、公表された期間は、デフレ脱却を目指して01年3月に量的緩和策を導入してから4年余りが経過し、06年3月に量的緩和の解除を決定する直前に当たる。景気回復や原油価格上昇に伴い、消費者物価指数のプラス転換が視野に入り、「消費者物価の前年比上昇率が安定的に0%以上になるまで継続する」としていた量的緩和の解除が確実視されていた。
議事録によると、10月31日の会合で、岩田一政副総裁が金融市場の物価予想を安定化するために「典型的なやり方の一つはイギリスが採用しているようなインフレーション・ターゲティングだ」と発言。想定する物価水準を対外的に示すべきだと主張。これに対し、須田美矢子審議委員は「金融政策運営の考え方をていねいに説明し、(金融政策への)予見可能性を高めるべきだ」と反論した。福井総裁は「中長期的な目標を設定した途端に、非常に短期間のうちに政治的な利害に一致している限り、全部弾を撃てということになりかねない」と述べ、物価が短期的に目標を下回った場合でも、政府から景気浮揚を狙った金融緩和圧力が強まることへの警戒感をあらわにした。さらに「(景気変動から遅れて変化する)物価指標にとらわれると、バックミラーだけをみて運転するような気がする」とも述べ、経済情勢に応じた柔軟な金融政策が阻害されることへの懸念を示した。【中井正裕】