日韓:慰安婦合意で関係改善も、通貨スワップ再開は時間かかる可能性
2016/01/15 00:33 JST
(ブルームバーグ):慰安婦問題をめぐる合意を受けて日韓関係が改善に向かっているものの、2015年2月に終了した両国間の通貨交換(スワップ)協定の再開にはなお時間がかかる可能性がある。日本政府は経済、金融分野での協力拡大に前向きな姿勢を示すが、韓国の有識者からは二国間関係が円滑に進んでいくと考えるのは早計との見方が出ている。
菅義偉官房長官は14日の会見で、通貨スワップの再開など韓国との経済、金融分野での協力について「二国間およびマルチの枠組みなどを利用しながら、両国および世界経済の状況を注視し、必要が生じた場合は適切に協力していくことが重要だ」と語った。産経新聞は14日付の朝刊で、韓国政府から正式な要請があれば、日本政府は日韓通貨スワップ協定の再締結に応じる方針を固めたと報じていた。
みずほ総合研究所アジア調査部長の平塚宏和氏は、「外貨準備の状況や通貨自体の信認でいうと、円はウォンに比べて高い交換性を持っている」と述べ、「どちらかというと、日本が支援する立場で、韓国が支援を求める立場」と指摘。再開をめぐる議論が進まなかった背景として「韓国の国内世論的に日本に助けを求めるような行動に出づらかった」と語った。15年12月の慰安婦問題をめぐる合意で「そうした制約が少し外れたというのが今回の動きだ」と述べた。
韓国延世大学(ソウル)のキム・ジョンシク教授は、海外への資本流出が問題化すれば韓国は通貨スワップの拡大が必要と感じるようになるかもしれないが、その場合でも、優先順位は米国との調整であり、日本ではないと指摘する。
韓国の柳一鎬・経済副首相兼企画財政相は就任前の11日に国会で開かれた人事聴聞会で、日本との通貨スワップ再開など通貨スワップの拡大を検討できるとの認識を示していた。ただ、同氏は産経新聞の報道があった14日には、11日の発言は原則論であり、現在日本と通貨スワップ協定を結ぶ必要はないと記者団に語った。
延世大学のキム氏は、日韓の政治的な緊張は最近になって緩和されたものの、二国間の協力は円滑になったというのは早計だ、との認識も示した。
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更新日時: 2016/01/15 00:33 JST