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 欧州の美術館などに収められている日本の伝統工芸品を修復する拠点「匠(たくみ)ビレッジ」をフランス北東部のアルザス地方につくり、職人の技や工芸品を海外に広めていく計画が動き出している。前文化庁長官の近藤誠一さん(69)らが職人に声をかけ、運営組織を立ち上げた。年内にも現地で活動を始める。

 拠点となるのは、ドイツ国境に近いオー・ラン県のアルザス・欧州日本学研究所。日欧の間の経済や文化などの交流を促すため、同県などが主導して2001年に設立された。かつて学校法人の成城学園(東京都)の教育施設があり、ホールや庭を備えている。学園の撤退が決まった約10年前、当時外務省の文化交流部長だった近藤さんに研究所側が跡地の活用を呼びかけたのが始まりだ。一昨年、現地視察を経て話が進み、昨年秋に訪日した県知事とも計画を話し合った。

 近藤さんは昨年、30年近く伝統文化の発信を続けてきた写真家の田川清美さん(66)=東京都港区=、匠ビレッジの「村長」に就任予定の和紙職人、金刺潤平さん(56)=熊本県水俣市=らと一般社団法人「匠プロジェクト」を立ち上げた。和紙や畳の職人や甲冑(かっちゅう)師、研ぎ師、漆芸家、書家らが参加する。