韓国の貯蓄率急増で内需回復に暗雲

 韓国の総貯蓄率が上昇を続け、内需に暗雲が立ち込めている。総貯蓄率は国民の総可処分所得から支出と消費を差し引いた部分が占める割合を指し、総貯蓄率が上昇すれば、国民が消費を抑え、貯蓄を増やしていることを意味する。

 最近家計債務が1200兆ウォン(約118兆円)に迫る中、貯蓄をある程度増やさなければ、家計に負担がのしかかるため、貯蓄率上昇にはプラスの面もある。しかし、総貯蓄率上昇が続き、家計が財布のひもを締めれば、内需回復が難しくなるというマイナス面もある。

 韓国の総貯蓄率は昨年第1四半期(1-3月)に過去17年で最高の36.5%を記録した後、第2四半期に35.3%に低下したかに見えたが、第3四半期には再び0.5ポイント上昇した。史上初めての1%台の低金利基調が1年以上続いている上、韓国政府が昨年下半期に12兆ウォン(約1兆1700億円)規模の追加補正予算を執行したり、個別消費税引き下げたりして、内需刺激に総力戦を展開したにもかかわらず、なかなか財布のひもが開かないのが現状だ。

■財布のひもを締める家計

 総貯蓄は家計、企業、政府の貯蓄(所得から消費を差し引いた額)で構成される。貯蓄は投資財源になり、外部からの衝撃に対する緊急資金の役割も果たすため、適正規模の貯蓄はプラスの働きがある。しかし、貯蓄が過剰状態になり、消費が低迷し、経済活力を低下させる「貯蓄の逆説」現象が生じることには警戒が必要だ。

 経済が安定した先進国ほど経済主体による消費の割合が高まり、総貯蓄率が低下する傾向がある。2014年現在で米国と英国の総貯蓄率はそれぞれ18.3%、12.8%で、欧州連合(EU)は22.3%、日本は21.1%(13年)だ。一方、依然として投資需要が高い中国の貯蓄率は48.8%と高く、台湾は韓国と同水準の33%だ。

 韓国の総貯蓄率は中進国の水準で過剰だとは言えないが、最近の上昇をけん引するのが家計だという点が問題だ。韓国銀行によると、過去3年間(11-14年)の家計(非営利組織を含む)の総貯蓄率は5.3%から7.1%に高まった。同じ期間に企業と政府の総貯蓄率はそれぞれ2ポイント、14ポイント低下した。昨年の統計はまだ示されていないが、専門家は同じ流れが続いたとみている。

 経済協力開発機構(OECD)の統計によると、昨年の韓国の家計による貯蓄率(7.1%)は、米国(4.8%)、日本(0.8%)に比べ高いが、EU(6.5%)に近く、ドイツ(9.5%)よりは低かった。韓銀関係者は「3-4年前までは家計の貯蓄率が低過ぎることが問題だったが、最近は上昇が急で、内需低迷を生んでいる」と指摘した。

金智燮(キム・ジソプ)記者
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