日本一の書評
2016年01月10日(日)

巨匠・筒井康隆が最後の長編小説『モナドの領域』を語る
「究極のテーマ『神』について書いたので、これ以上書くことはない」

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筒井康隆氏

(取材・文/瀧井朝世)

―2年半ぶりとなる長篇小説です。まず、河川敷で女性の片腕が発見され警察の捜査が開始されるところから始まります。一方で、片腕の形のバゲットで話題を集めるベーカリーも登場し、常連客の老教授が奇妙な振る舞いを見せるようになる。最初は刑事が主人公のミステリーかと思ったら、予測のつかない方向に話が広がっていきますね。

最初のアイデアは、片腕の形をしたパンだったんです。私はパンのなかでバゲットが一番好きなんですが、腕の形のパンで短篇ができないかと考えたんです。そこに昔から考えていた神というテーマがくっつきました。

刑事たちの名前はNHKのBSニュースのアナウンサーたちの名前です。警部の上代真一は大ファンである上代真希ちゃんから(笑)。鑑識の堤は堤真由美、杉本刑事や井上刑事はそれぞれ杉本麻紀、井上真帆からです。

―それは気づきませんでした(笑)。片腕の事件には驚きの真相がありますが、それは〈GOD〉と名乗る神の登場に関係があります。神と人類が法廷やテレビ中継で討論を行うことになりますが、どんな問いにも神が深遠な回答をする様子がスリリングです。

『34丁目の奇跡』という映画がありますよね。たまたまこれを書く頃、衛星放送でリチャード・アッテンボロー主演のリメイク版を観たら、貶められたサンタクロースが法廷に出ていく場面があったんです。

それを観たことが、神が法廷に引っ張り出される場面に繋がっていきました。それから、法廷では突っ込んだことが言えないということで、テレビ中継の場面も作り、そこでいろんな質問が出てくるように考えました。

次ページ 僕は神の存在を否定する側にいる…
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