2013年9月25日水曜日

[本]貧乏人の経済学

貧困について科学的に分析した本。非常に興味深い内容だった。

エッセンスを一言で言うと、
「神は細部に宿る」
ということだろう。

貧困には
1.大権力を行使して大規模な資本を透過して「貧困の罠」を抜けさせる
2.自由経済を保証して自助努力で貧困から抜け出すのを促す
といった議論がつきものだが、現実は2者択一ではない。

大規模な援助プロジェクトが賄賂に消えることもあれば、
インドネシアの学校教育のようにうまくいく場合もある。

これは(外部環境もあるが)制度の細部が適切に設計されているか否かが重要だと述べている。
独裁政権下でわずかに与えられた自治制度でも適切な設計ならば人々は貧困から抜けだすし、
民主政府が汚職にまみれることもある。

他にも、
「貧乏人は頭が悪いから目の前の快楽のために投資をしない」
のではなく、
「貧乏人には先進国では制度が保証していることも自分で判断する必要があり、
適切な判断が難しい」
など、貧乏人に関する一般に漠然と信じられている前提を崩していく。

こうした検証はランダム化比較試験によって科学的に行われており、
経済学にありがちな宗教戦争(「自由市場で貧困が解決しないのは自由が足りないからだ」)から
抜け出すことができる。

先進国の貧困についても通じる考えがあり、国際開発に関わらない分野の人が読んでも
得るものがあるだろう。

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