12月は文字通り四六時中働いていたので、今更ではありますが、このタイミングで大学業界の2015年を振り返ります。
新聞記事データベースの検索結果をもとに、大学に関係あるトピックを抽出しました。大学(特に国立大学)全体に関係ありそうなことや個人的に気になったことを並べましたので、全てのニュースを網羅しているわけではありません。
1月
- ネットの指摘により、東大・阪大などの論文80本に不正の疑い
- 東京大学大学院情報理工学系研究科が科学研究ガイドラインを改訂したことが判明
- 2015年からの新しい配分方式に従い、法科大学院の補助金配分金額を文科省が公表
- 17年ぶりに大学入試センター試験で得点調整が発生
- 名古屋の女子大学生を殺人容疑で逮捕
2月
- 理化学研究所が小保方氏の処分を公表
- 国家戦略特区による医学部新設について日本医師会などが反対申し入れ
- 2014年度設置計画履行状況調査の結果が公表され、253校に改善要求
- 高大接続システム改革会議が設置
- 日本学術会議が「科学研究における健全性の向上について(回答)」をまとめ、研究資料の10年間保存などの方向性が明らかになる
3月
- 国立大学の予算に学長裁量枠を設けることが明らかになる
- 内閣府の「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会」により、公的研究費による研究成果の論文やその研究データを論文掲載後に原則公開とする方針が明らかになる
- 教育再生実行会議第6次提言が公表され、大学の在籍年数延長や資格の取得などを目指す教育プログラムの設置などが示される
- 大阪大学が2017年度から全学部でAO・推薦入試を導入する方針を発表
- STAP問題に関連し山梨大学が教授の処分を公表
- 東京大学が研究費不正取得により教授を懲戒解雇したことを公表
- 文科省に「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」が設置
- 文科省の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の審議まとめが公表
- 理化学研究所の野依理事長が退任し後任に松本前京大学長が就任
- 大阪桐蔭中高の不正流用を受け大阪産業大学に補助金2割減額処分
4月
- 桜美林大学がパイロット養成施設指定を返上
- 科学技術・学術政策研究所の調査により大学教員の研究時間が減少していることが明らかになる
- 日本医療研究開発機構(AMED)が発足
- 実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度づくりを中央教育審議会(中教審)に諮問
- 聖マリアンナ医科大病院の精神保健指定医が資格を不正取得していたことが発覚
- 北海道大学が2018年度入試から国際バカロレアを活用することを発表
- 教育再生実行会議が教員採用試験の筆記試験を国が全国統一で行うよう提言
- 文部科学省が大学が設置する社会人の学び直しのためのプログラム「職業実践力育成プログラム」(BP)の認定制度を開始
- 文部科学省が学校法人「幸福の科学学園」に対し大学などの設置を5年間認めないことを決定
5月
6月
- 大阪大学教授が研究費900万円を不正受給
- 大阪大学が学内VCに100億円を出資
- 文部科学省が教員養成系や人文社会科学系の学部・大学院の廃止や転換に取り組むことなどを求める通知を発出
- 文部科学相が国立大学に対し入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を要請
- インターン制導入など教職課程の改革素案が明らかになる
- 中京大学が2016年度から法科大学院を募集停止
7月
- 卓越大学院や卓越研究員に関する素案が明らかになる
- 高大接続システム改革会議の中間報告に向けた素案が明らかになる
- 神戸大学が2017年から国際文化学部と発達科学部を再編統合し新学部を設置することを発表
- 内閣府、文部科学、厚生労働が千葉県成田市での大学医学部の新設を認める方針を決定
8月
- 中教審が次期学習指導要領の骨格案を了承
- 文科省が国立大学の学長裁量経費を2016年度予算から一律5%にすることを発表
- 文科省が2016年度から地方私立大と中小私立大に限定した地域産業・文化の研究費助成制度を創設することを発表
- 高大接続システム改革会議が大学入試改革を高校の次期学習指導要領と連動させる中間まとめ案を了承
- 佐賀大学が地域デザイン学部を新設することを発表
9月
- 司法試験の内容漏洩が発覚
- 司法試験合格者が1850人
- 文科省が法科大学院への2016年度の補助金算定に向けた5段階評価を公表
- 文科省が複数の企業が2000万円以上の研究費を出す場合に同額を補助する事業を開始することを発表
10月
- 馳浩氏が文部科学大臣に就任
- ノーベル生理学・医学賞に大村智氏ら3氏
- ノーベル物理学賞に梶田隆章氏ら2氏
- 文科省が就業体験の単位認定など教員養成改革案を発表
- 国立大学法人の第3期中期目標・中期計画素案が明らかになる
- 東京大学が東京大学ビジョン2020を公表
- 財政制度等審議会が国立大の自己収入年1.6%増を要求
- 九州大学が2017年度からネット出願を導入することを発表
- 文科省が科研費の審査を2018年度から抜本改革することを発表
- 文科省通知に17国立大の人文系学部長に抗議声明
- 国立大学協会が交付金削減案に批判声明
- 経団連調査により2015年度の就活ルールについて「学生・企業に悪影響」と8割が回答
11月
- 第5期科学技術基本計画に成果目標を盛り込むことが明らかになる
- 文科相が新共通テストの導入先送りを示唆
- 国立大学法人評価結果が公表され、3大学に重大な改善事項があると判明
- 大阪大学係長が宿泊料を着服したとして懲戒解雇
12月
- 茨城大学が農学部を改変することを発表
- 経団連が採用選考の新指針を正式決定
- 国立大学法人に寄付しやすくなる税額控除制度導入を決定
- 大阪府立大学及び大阪市立大学を1法人1校にする方針を大阪府知事が公表
- 国立大交付金は2016年度は据え置きし配分方法を変更することを決定
- 長崎大学が外部コンサルタントの指導のもと働き方改革を実践
- 中教審が教員養成に関する答申を公表
- センター試験後継テストについて記述式問題例を初公開
- 大阪大学教授の研究費不正経理が発覚
- 成蹊大学が2017年度から法科大学院の募集停止を発表
2015年度に公表された答申等の一部は、以下のとおりです。
中央教育審議会等
- これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について ~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~ (答申)(中教審第184号)
- 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について(答申)(中教審186号)
- 第2回共通到達度確認試験試行試験の基本的な方向性について
- 高大接続改革実行プラン
- 未来を牽引する大学院教育改革~社会と協働した「知のプロフェッショナル」の育成~(審議まとめ)
- 理工系人材育成戦略
教育再生実行会議
- 「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について(第六次提言)(平成27年3月4日)
- これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、教師の在り方について(第七次提言)(平成27年5月14日)
- 教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方について(第八次提言)(平成27年7月8日)
総合科学技術・イノベーション会議
こうして見ると、教員養成改革に関することや高大接続テストに関することは年間を通じて何らかあったことをがわかります。後半では、人文社会科学系に関することと就活日程に関することがよく取り上げられていました。そういえば、G型L型の話も2015年でしたね。
2014年度多かった研究不正については2015年度は比較的取り上げられていませんが、最後の最後にJST-ERATO研究総括という大きいものがきました。岡山大学の研究不正の動きも気になるところです。平成24年度補正予算第1号である産業競争力強化法に基づく出資の話も2015年に本格稼働し始めましたね。
2014年度に話題になったネット出願や100円朝食などはあまり取り上げられていませんが、取り組まれなくなったというよりは、ニュースバリューがなくなるほど一般化したと考えています。個人的には、国家戦略特区の医学部設置が千葉に決まったというのが印象的でした。神奈川県も実験動物中央研究所がある羽田空港対岸に誘致を進めていたと聞いていたのですが、千葉県が一歩先んじた形になりましたね。
2016年は国立大学法人の第3期中期目標期間の開始年度であり、新たな予算配分方式や第2期の評価も含め色々動きがありそうです。また、地方創生と大学との関係もより実質化していくのでしょう。中教審等で審議されている3ポリシーに関連した大学教育や職員の高度化、実践的な職業教育を行う教育機関の創設も気になりますね。