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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

怪しい上場企業にJPXが「情報開示責め」

2015年12月28日 [reuters]

東京証券取引所の大納会が迫ったこの時期は、様々な統計がほぼ固まるタイミングでもある。日本取引所グループ(JPX)のHPに掲載されている上場廃止関連の資料をみて、「へぇー」と思わされた。

今年上場廃止が決まったのは東証一部・二部、マザーズ、ジャスダックで68銘柄(12月24日現在)。そのほとんどはM&Aに絡んだものだが、じわりと増えているのが日本取引所グループの自主規制法人の判断や裁量で強制退場が決まった上場廃止だ。

わずか4銘柄に過ぎないが、前年までは年間1-2銘柄でしかなく、さらに遡ると10年間で1-2銘柄しかなかった時期もあったから、何かしらの変化を感じずにはいられない。来年は強制退場させられる銘柄がさらに増えるのだろう。

その兆候はある。上場廃止に加え、「開示された情報に虚偽がある」として公表措置と改善報告書の提出を求められた銘柄も増えている点だ。やはり開示情報に虚偽があったとして特設注意市場に放り込まれた銘柄、上場契約違約金懲求銘柄などと合わせると、マーケットの大掃除やどぶさらいはやはり活発化しているのだ。

東証二部市場に上場しているある投資会社は、このところ自主規制法人から執拗に情報開示を求められるようになった。

「新株予約権の発行で得た資金は何に使ったのか、具体的に開示せよ」

「その資金は現在、どこにあるのか」

「海外投資に使うはずの資金が、なぜ今も銀行にプールされているのか」

回答にあやふやな点や矛盾点があると、そのたびに自主規制法人から詳細に説明せよと矢のような催促が飛んでくる。が、もともと堂々と開示できないようなことを繰り返してきたのだから、満足な説明ができるはずもない。情報開示の責任者は「箸の上げ下ろしまで監視されているようだ……」と頭を抱えているという。

この企業はこれまで第三者割当の形で新株予約権を繰り返し発行し、調達した資金はどう使われたのかはっきりしなかった。一方で前社長らが顧問料や経営指導料の名目で社外に流出させたりしたと言われ、昨年には有価証券報告書に虚偽の説明があったとして内部告発文が監督官庁に送付された経緯がある。

それで思い出した。今夏に日本取引所グループの自主規制法人を取材したとき、幹部が「(上場企業にふさわしくない企業に対して)情報開示を徹底して求めていく」と話していた。こちらは内心「悠長なことを言っているな。開示を求めるだけではダメなのに」と感じたが、それは情報開示をテコに問題企業を上場廃止に追い込んでいく方針について語っていたのだ。

すでに上場廃止が宣告されたある企業は「自主規制法人からは『特設注意市場に移っても、きちんと情報開示すればすぐ元に戻れますよ』と言われていたが、猶予期間が切れるとあっさりとクビをはねられた」とこぼしているから、取引所は本気なのだろう。

怪しげなエクイティ・ファイナンスを繰り返す問題企業が減れば市場の効率性や透明性、健全性は高まり、ダイナミズムも増すはずだ。

「ならばいっそのこと……」と思う。問題を抱えている有力企業が外部の弁護士からなる調査委員会を立ち上げて徹底的に調査をさせて、それが本誌などで報じられているにもかかわらず、よほど不都合な真実が含まれているのか、調査結果は非開示としてしまうケースが相次いでいる。

「プロ経営者」を標榜する外資帰りの社長が突然退任発表したLIXILがその典型だ。透明性やグローバリズムを吹聴したくせに、いざ足元で不祥事を起こすと、調査委員会報告を訴訟を理由に非開示としてしてしまった。

せっかくえぐり出した問題をひた隠しにするのでは、調査に参加した弁護士たちに爆弾を抱えさせるようなものでもあるのだから、JPX自主規制法人はこれらにも徹底した情報開示を求めてはどうだろうか。

企業とグルになって、臭いものに蓋をする弁護士や公認会計士も同罪、彼らが隠れているイタチの穴も「情報開示責め」の煙でいぶり出す必要がある。

投稿者 阿部重夫 - 13:15| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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