自称ミュージシャンが、法廷で徹底抗戦の構えを見せた。都内のJR東日本施設内で不審火が相次いだ事件で、威力業務妨害罪などに問われた無職野田伊佐也(いざや)被告(43)の初公判が16日、東京地裁(安藤範樹裁判官)で行われた。野田被告は「正当な行為だから無罪」と主張。線路脇の送電線を焼損させ、山手線を運休させた行為を「重要不可欠」とした。
肩までかかる長髪の野田被告は、上下グレーのスエット姿で入廷。検察側の起訴状読み上げを聞いた後、「本人が記載したもの」と断った弁護人から1枚の紙を渡され、読み上げた。
「起訴状に書いてあることは間違いないが、自分のやったことは正当な行為に当たる。日本の主権、領土、国益、国民の身体、財産が、JRの節度のない不当な越権行為によって危機にさらされている。やむを得ず取った行為で、危機意識の啓発や注意喚起を目的としたもの。損壊や妨害は正義の表現にとって極めて重要不可欠。だから自分は無罪です」
読み終わった後、弁護人の前の長いすに座り、紙を折りたたんで尻ポケットにしまった。9月15日に逮捕された後、動機について「大量に電力を消費するJRが許せなかった」などと供述してきた。
検察側は、冒頭陳述で「JRが電力を浪費しているとの独善的な臆測に基づき、今年春ごろから火炎瓶を使った妨害をするようになった。犯行で、5万人を超える乗客に影響した」と指摘した。
野田被告は都内の約10件の不審火で関与を認め、計3回逮捕され、同様の事案で今月中と来月に追起訴があるという。第2回公判は来年1月21日。裁判官から「出廷してください」と念を押されると、野田被告は「了解しました!」と元気良く答えた。【柴田寛人】
◆JR連続不審火事件 今年8~9月、線路脇のケーブルが焼けたり、変電所でぼやが起きるなど、都内のJR敷地内で約10件の不審火が発生。品川区、目黒区、北区、渋谷区、中野区、国分寺市、立川市と広範囲だった。8月27日には山手線が1時間15分ほど運転を見合わせ、約5万1000人に影響が出た。野田被告は燃料用アルコールをペットボトルに入れ、火を付けて投げ込んだり、防護管に電動ドリルで穴を開け、燃料用アルコールを入れて火を付けるなどの行為を繰り返し、現場の写真を投稿サイトに載せていた。