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【政治】

日印、原子力協定で合意 核拡散防止条約 非加盟国と初

 【ニューデリー=共同】安倍晋三首相は十二日午前(日本時間同日午後)、インドのモディ首相とニューデリーで会談し、日本の原発輸出を可能にする原子力協定の締結に原則合意した。締結すれば核拡散防止条約(NPT)非加盟国とは初めて。安倍首相は平和利用に関し、インドが核実験した場合は協力を停止すると伝えた。両首脳は、インド初の高速鉄道計画における日本の新幹線方式の導入も決定。支援のため最大約一兆四千六百億円の円借款を供与することで一致した。 

 会談後、両首脳はこうした成果を盛り込んだ共同声明を発表した。

 原子力協定をめぐっては、日本はNPT体制を重視する立場から、非加盟国とは締結してこなかった。今回の合意は非加盟国の核兵器保有を事実上認めることになりかねず、日本の原子力政策の転機になる可能性がある。交渉では、唯一の被爆国として軍事転用に明確な歯止めを設定できるかが焦点となっていた。

 これに関し、安倍首相は共同記者発表で「日本による協力を平和目的に限定する内容を確保した」と強調。モディ首相は「インドは約束を必ず守る」と述べた。核実験した場合の協力停止や、使用済み核燃料の再処理に関し、平和利用を担保できる措置の明文化をめぐり今後、実際の協定締結に向けて詰めの交渉をするとみられる。

 会談で両首脳は、中国の海洋進出を念頭に米印両海軍による海上共同訓練「マラバール」に、日本の海上自衛隊が定期参加することで一致。会談に合わせ、日本からの防衛装備品や技術移転を可能にする協定と、防衛関連情報を交換するための情報保護協定への署名に立ち会った。海上自衛隊の救難飛行艇「US2」のインド輸出交渉を加速させる思惑がある。

 新幹線については、インド西部の同国最大の商業都市ムンバイとアーメダバード間の約五百五キロを結ぶ路線への導入で一致。総事業費九千八百億ルピー(約一兆八千億円)のうち、最大で81%を円借款で支援する。

 共同記者発表で、モディ首相は、原子力協定での原則合意に関し「両国の信頼と戦略的パートナーシップの新たなレベルを示す輝けるシンボルだ」と評価した。

◆経済優先 揺らぐ被爆国

 日本がインドとの原子力協定締結に原則合意し、インドへの原発輸出が容認されることになった。NPTに加盟しないインドとの締結は、原子力を核兵器に転用する懸念が指摘されるが、安倍晋三首相は原発輸出による経済成長を優先させた。被爆国として核不拡散、非核化を提唱してきた日本の立場は大きく揺らいだ。

 日本にとってインドは十五番目の締結相手。東京電力福島第一原発事故後は三カ国目だが、初めてのNPT非加盟国との締結という点でこれまでと異なる。

 NPTは核兵器を拡散させない義務や、原子力の軍事転用を認めない多国間の条約。インドは、米国やロシアなど五カ国以外の核保有を禁じるのは不公平と主張し、核兵器保有国となった。対立する隣国のパキスタンも核を持ち、にらみ合ってきた。二〇〇八年には米国とインドの原子力協定が発効し、NPT体制はほころびを見せた。

 日本がインドとの締結交渉に入ったのは民主党政権時代の一〇年。その後の原発事故で中断したが、成長戦略の柱に原発輸出を位置付ける安倍政権は、電力需要が急増するインドを大きな市場と位置付け、一三年に交渉を再開した。首相はインドが核実験を自主的に延期し、原子力施設を民生と軍事用に分けている点を「インド政府と確認している」と強調し、協定締結を目指してきた。

 日本側は締結にあたり、インドが軍事転用していないかどうかに関し、国際原子力機関(IAEA)の査察を認めているとして、不拡散に協力的だと説明してきた。インドが核実験をすれば、日本の協力は停止されるとも説明する。

 ただIAEAが査察できる施設は全体の一部に限られ、インド側の申告の正しさは必ずしも担保されていない。使用済み核燃料の再処理で抽出されるプルトニウムが軍事転用されないことを、どう担保するかもまだ分からない。核拡散を本当に防げるかどうかは疑問が残る。 (大杉はるか)

 

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