漫画原作者の猪原賽です。先日のスマホで読む「縦スクロールマンガ」についてのエントリー。その追記です。具体的に言えば、俺の言いたいことを汲んで、きちんど図解で見せてくれてる!というリプエントリーの往復がありました。ありがたい。
図解で見る!縦スクロールマンガ(Webtoon)の未来
前回の意図を図で解説してもらった!
私が前回「縦スクロールマンガ」について言及したのは、トキワ荘プロジェクトディレクターの菊池健さんのエントリーにリプライしたものでした。さらにその私のエントリーにリプライしていただいた記事が、上記のエントリー。
図2:60年代(イメージ)
図4:2015年現在(イメージ)
私が言いたかったことは、菊池さんが図解した、このグラフがまさにそのままのことです。
引用画像は<図2><図4>と端折っていますし、その詳しい解説は、引用元のエントリーをぜひ参照ください。
これは「作家向け」の話なんです
前回のエントリーを読んで、やっぱり見開きの迫力こそマンガ。右から左への構成がマンガ。縦スクロールには違和感が。そんな意見が見られました。
私は、読者が縦スクロールマンガを“嫌う”ことは否定しません。違和感を持っているのは、これまでのマンガに慣れた自分も同様です。
違和感がある、苦手、魅力的に思えない、理解できない――そういった意見を持つマンガ読者ならば、単に「縦スクロールマンガ」を読まなければいい話。
菊池さんも書いているとおり、過去マンガが糾弾された60年代、マンガを否定するマンガを読まない上の世代の層があったように、そして彼らがけしてマンガの読者にならなかったように、これまでのマンガを愛するマンガ読者は、これまでのスタイルのマンガを愛していればよろしい。私もできればそっち側で仕事を続けていきたい。きちんと見開き2ページの構成のマンガを、ぞんぶんに指でめくって楽しんでいただきたい。
だが、60年代に「マンガなんて」とオトナから鼻つまみもののように見られた世代が、どんどん定年を迎えていくように、これまでのマンガを愛する層は高齢化し、図の右に追いやられ、(少子化という問題があるにせよ)若いスマホマンガ読者という新しい層に押されていく。
スマホという媒体でみる、縦スクロールの、まったく新しい形状のマンガ。それはもはや我々オッサン世代の考えるマンガとは、概念を別にするものかもしれない。
が、そこには確かに「読者」がおり、作家はそこを無視出来ないのでは? 本人の嗜好の好悪あれど、これから少子化し読者の分母が減る中、そのスマホマンガネイティブな層をシカトしてたら商売になんないじゃん!
スマホマンガを描く若い世代のマンガ家が、若い世代の読者相手にヒット作をつくっている状況に、これまでガッツリマンガを描いて来たプロマンガ家は悔しくないのかい? と煽りたくもありw
また、作家だけに限らず、業界――特に出版社にも考えてもらいたい問題なんですよね……。業界の意識改革。それがないことには、スマホネイティブな読者を、これまでの作家が(出版社が)獲得するのは難しいのではと、私は心配なのです。
だがまた新たな問題が!
こちらは同様に、私のエントリーにリプライする形で書かれた、WEBでマンガを描いている渡辺アビさんのエントリー。私の前回のエントリーや、菊池さんの図解エントリーを引用しつつ、ご自身のマンガを縦スクロールにローカライズを試みたことのある経験談を語っておられます。
はいこちら。
これがこう。
語順が逆になる!
マンガの、特に縦スクロールマンガの海外展開を考えた場合、翻訳の際セリフが横書きになるわけです。
縦書き文化の中で育った日本のマンガは、横書きだと構成おかしくなる。単純に今までのマンガの描き方をしたマンガを、スマホ向けに縦長に再構成するだけならともかく、セリフの横書き化(英語ローカライズ化)まで含めると、これ意外にたいへんだぞ……という話題。
comico等、最初からスマホ縦スクロールマンガを見込んでの構成をしたとしても、この「翻訳」にあわせたフキダシの位置、構成もまた変わってくるわけで……。
海外をも見据えたスマホマンガには、横書きセリフが必須。
しかし逆に日本でコミックス化される際には、従来通りの縦書き構成でないといけない。comicoもヒット作品は従来どおりのコミックスとして市場に投入している。
これは言ってみれば矛盾です。これはもう、コミックスも横書きセリフの左綴じ構成という英断を下すほか、解決策はない。
日本の従来のマンガ家よ! 縦スクロールマンガに対応せよ! と大きな事言いながら、さっそく大きな壁にぶち当たってしまいました。
MDCで話聞いてくる
そんな話題にも踏み込んで話を聞きたいマンガ業界トークセミナー「マンガ・デベロッパーズ・カンファレンス(MDC)」が明日開催されます。テーマは「デジタルコミックの描き方と稼ぎ方」。
今回は3人の方、気鋭漫画家で縦スクロールマンガの先駆者、萱島雄太さん、NHN comico㈱ で、『デジタル漫画のテクニック-comicoスタイルを学ぼう』の企画・編集をされた大藤充彦さん、ebookjapanで『でんしょのはなし』の編集をされた宮坂琢磨さんをお迎えし、それぞれの立場から「デジタルコミックの表現、稼ぎ方」をクロストークしていただきます。
私も傍聴者として参加してきますので、後日何かレポート出来るといいなあ。
私の「漫画原作シナリオ集(電書版)」販売中です
上巻は107円、下巻は215円です。「猪原式シナリオ」で書かれたマンガ原作と、それに対する横島一さんのネーム作例が収録されています。
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